スマホを見ると目がかすむ?それって「スマホ老眼」かもしれません

老いも若きも、スマホと切り離せない生活を送るようになった昨今。目のピントが合いにくい・・・という症状に悩んでいませんか? それ、その名もズバリ「スマホ老眼」かも。若い人にも急増中の眼のトラブルの原因や予防方法などを眼科医の先生にうかがいました。

移動中や寝る前はもちろんのこと、待ち合わせなどのちょっとした合間にもさっとスマホを取り出してしまう現代人。
筆者も寝る前にスマホでマンガを読むのが日課となっているのですが、ある日、ふと画面上の細かい文字が見にくくなっていることに気づきました。
「あれ、近視のはずなのになぜ近いところが見にくいんだろう……」。そんなふうに思っている時に「スマホ老眼」なる言葉を知って、「これだ!」と思い当たった次第です。
同じような症状がある方、いらっしゃいませんか?
今回は横浜市青葉区の「スマイル眼科クリニック」の岡野敬院長に、スマホ老眼の実態と予防法についてうかがいました。

スマホ老眼は目のピントを酷使しすぎて起こる

――スマホ老眼とは、どのような状態をさすんでしょうか?
岡野先生:スマートフォンの利用を含めて、近くを見る連続時間が異常に長くなったことにより、ピントを合わせる力が年齢不相応な程極端に、かつ一時的に低下した状態です。
――原因はやはり、スマホの使いすぎですか?
岡野先生:人間の目は単焦点のレンズです。基本は離れた距離にピントが合っていて、それ以外の場所を見るときは、目の筋肉(調節筋)に力を入れて頑張って見ているのです。ですので、スマホを至近距離で見ているとき、目は無理矢理近くにピントを合わせている状態なのです。
この状態のままスマホ作業などを長時間続けると、調節力が低下して20歳の人の調節力が、見かけ上40歳以上の人の調節力レベルまで低下してしまいます。これを「スマホ老眼」と呼んでいます。
――スマホ老眼になったらどうすればいいのでしょうか?
岡野先生:スマホ老眼の原因は過剰な負荷、つまり疲労ですから、基本は休みを入れることです。
本来、連続労働作業は90分までが目安になっています。労働基準法で午前・午後にお茶の時間があるのはそのためですね。でも今は、仕事の休憩中にもスマホを使う人が多く、目が休まることがありません。
休み時間にはなるべく目の調節筋をほぐすことです。視線を上下左右に動かす、近くと遠くを順に見る、などの調節筋をほぐすための体操やマッサージをしたり、ホットアイマスクなどを用いて目を休ませることが望ましいでしょう。
――病院ではどのような治療を行うのですか?
岡野先生:以下のような流れで治療を行ないます。

  • 現状の把握
  • 矯正器具のチェック
  • 慢性の眼精疲労・ドライアイなどの鑑別診断
  • 生活習慣改善の指導
  • 点眼の処方
  • 正しい矯正器具の処方

――矯正器具とはメガネやコンタクトレンズのことですよね? なぜチェックをするのでしょうか?
岡野先生:スマホ老眼は、メガネやコンタクトレンズの使い方や度数が適当でないことなども大きく影響しているんです。
特に、近年は矯正器具の不具合率が非常に高いですね。そもそも、みなさんが今お使いのメガネやコンタクトレンズは、生活用途に合ったものでしょうか?
――と言いますと……?
岡野先生:度数の高いメガネは遠くに、低めのメガネでもある程度離れた距離にピントが合っている状態になります。それ以外の場所にピントを合わせようとすると目の筋肉に力を入れて頑張って見なくてはいけません。
つまり視力1.2や1.5に合わせたメガネはスマホが見づらいメガネなのです。メガネ処方時はメガネ店ではなく、眼科を受診してきちんと合わせるようにして下さい。
――スマホの使用頻度が高い人は、それに合ったメガネをかけることも大切だということですね。

仕事環境の整備から対策開始!

――スマホ老眼にならないための予防策はありますか?
岡野先生:「スマホ老眼」と聞くとセンセーショナルな名前ですが、簡単に言えば「スマホの普及で近年大幅に増加した、一晩寝ても回復しない年齢不相応な眼精疲労である」と言えると思います。
原因はスマホに限らず、薄暗いとことで近くを長時間見続ければ同じ症状になります。よって、対策としてはなるべく姿勢を正しくして、90分以上の連続労働作業はせず、労働環境としての明るさを確保することが大事になります。
ディスプレイは画面の中心が正面視より15度下の位置にくるように配置しましょう。CADなどを使用する職場の人は、積極的にマウスをトラックパッドやトラックボールに置き換え、キーパンチが多い人はアームレストを使用しましょう。
明るさが足りないと疲労が増えるので、オフィス内では最低でも500ルクス、できれば750ルクスほどの明るさを確保できるといいでしょう。
――姿勢も影響しますか?
岡野先生:姿勢が悪いと、肩こりや眼精疲労、ドライアイを引き起こす可能性があるので、姿勢矯正グッズを使うことも望ましいでしょう。座面に敷くタイプのものやコルセット状のものなど、いろいろ販売されていますね。
また、血行不良の改善は非常に効果的なので、「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」(花王)や「あずきのチカラ 目もと用」(きりばり)などのホットアイマスク商品は大変おすすめです。
――短い時間でできるようなエクササイズはありますか?
岡野先生:できればホットアイマスクをしたあとに、まぶたの表面をクレンジングするときのように「の」の字にマッサージしましょう。このとき眼球を上からグイグイ押さないこと。骨に向かって力を加えるのは大丈夫です。
涙が足りない時のツボ、目のかすみに効くツボなどもありますので、押してみてもいいかもしれません。
* * * *
スマホ老眼を防ぐためには、目の休息と姿勢を含めた普段の仕事環境がとても大切だということがわかりました。
繰り返しになりますが、スマホ老眼は何歳でもなる可能性のある目のトラブル。
替えの利かないたいせつな目を守りながら、上手にスマホライフを送ってください!
【取材にご協力いただいた先生】
岡野敬(おかの・たかし)先生

スマイル眼科クリニック院長。杏林大学病院アイセンター、公立阿伎留病院眼科などを経て、 平成15年1月よりスマイル眼科クリニック院長。専門は前眼部疾患、緑内障、アレルギーなど一般眼科外来と、コンピュータ支援医療。趣味はコンピュータ、料理、ワイン、コーヒーなど。

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青木美帆(あおき みほ)

ライター/エディター。バスケットボール専門誌の編集部を経て、バスケット、野球、サッカー、その他スポーツや教育の現場を奔走中。目標は日本のバスケット文化を豊かにすること。ITオンチ代表として、身近な疑問をやさしく丁寧に解決します。⇒twitterfacebook