私たち日本人にとって3月は卒業(別れ)、4月は入学(出会い)のシーズンというイメージがあると思います。でも、実は4月に入学というのは世界的には珍しいようです。
ここでは日本の入学がなぜ4月なのか、他の国・地域はどうなのかをご紹介します。
世界の入学シーズン一覧
保育園・幼稚園から始まり、小学校、中学校、高等学校、専門学校、短大、大学と日本の教育機関はどこも「4月」を入学シーズンとして定めています。
しかし、世界を見渡すと、4月に入学というのはどうも珍しいようです。
下記は、それぞれの国の主な入学シーズンです。
1月:シンガポール
1月末から2月頭:オーストラリア、ニュージーランド
3月:韓国
4月:日本、パナマ
5月:タイ
6月:フィリピン
8月:ドイツ
9月:アメリカ、ロシア、中国、イギリス、カナダ、フランス、ベルギー、トルコ、モンゴル
10月:ナイジェリア、カンボジア
※同じ国でも州・地域ごとに入学シーズンの異なることがあります。
上記から分かるように、世界の入学シーズンの主流は「9月」です。
4月が入学シーズンとなったわけ
実は、かつて日本も西洋教育が導入された当初は、9月が入学シーズンでした。
4月を新年度の始まりとする制度は、明治19年(1886年)から徐々に始まったとされています。その理由を調査したところいくつかの説が浮上してきましたので、ここでは主な説をご紹介します。
稲作との関わり説
まずは稲作との関わりです。
50年前でも今の5倍ほどあった米農家。日本にはかつて今よりもずっと多くの米農家がありました。
米は品種や地域にもよりますが9月から10月が稲刈りの時期で、そこから乾燥、もみすり(もみ殻を取る作業)をするとなると、米を売ったあと農家に収入が入り、納税されるのはのは11月以降となります。
多数を占めていた米農家から納税されたあとに役所が収支を計算して、そこからさらに政府が予算編成をして、ようやく学校などの公共事業に、次年度の予算がおりてきます。
これらの流れを考えると、4月が次年度の始まりにちょうどよかったという説です。
イギリスに合わせた説
次に、イギリスの会計年度に合わせたという説です。
明治初期、イギリスは欧米諸国でもとくに力のある「世界のリーダー」的な存在で、日本は島国ということもあってイギリスに親近感を抱いていました。
そして、イギリスの会計年度(政府が定める会計作業の期間)が4月から始まることもあり、日本もイギリスに合わせて明治19年(1886年)に4月を次年度の始まりにしました。
その会計年度が変わったタイミングで、当時の師範学校の学費は公費で賄っていたということもあり、学校の年度も変えた方が都合がよかったという説です。
日本も9月入学になることはあるのか
今回は、なぜ日本の入学シーズンが「4月」なのかの説をご紹介しました。
・稲作との関わり説
・イギリスに合わせた説
その他にも諸説ありますが、どちらにせよ世界の入学シーズンのスタンダードは「9月」で、日本とは「5ヶ月間」のズレがあります。
近年、日本では海外への留学者数が毎年増加しており、そのなかで留学先と入学シーズンにこれほどズレがあるというのは無視のできない問題です。
しかし、日本の行政、司法は「前例主義」を前提に行動しています。
そのため、一度決められたことについては変更されない、または変更までに時間がかかるわけで、入学シーズンが4月から変わるのはすぐには難しいといえるかもしれません。