ウチの子どもや奥さんは、辛いカレーがあまり得意ではないので、家でカレーを作るときは、子ども用、奥さん用、自分用と3種類の辛さものを作っている。面倒でも「おいしい!」と言ってもらえるとうれしいし、次の日にリメイクするカレーうどんも、おいしいんだよね~!
そんな話を知人にすると「なぜかうまくとろみがつかなくて、カレーが汁っぽくなっちゃって……」という人がけっこう多い。作り方を聞いてみると、みんなきちんとルウのパッケージ通りに作っているという。
なんでとろみがつかないんだろう? そう思って、パッケージに書かれている作り方をじっくり読んでみると、ヒントになりそうな手順を発見! それについて調べてみると”とろみがつかない問題”を解決できそうな答えが見つかった。
ルウを入れる前に火を止める理由
最初に気になったのが、どのカレーのパッケージにも書かれている「いったん火を止め、ルウを割り入れて溶かします」という手順。わざわざ火を止めろと書くのだから、それなりの理由があるのだろうと調べてみた。するとおもしろいことがわかった。
ルウには、とろみをつけるために小麦粉が含まれている。この小麦粉のデンプンが加熱されると固まって(「糊化:こか」という)とろみとなるのだ。
この小麦デンプンが固まり始める温度は87.3℃。なので、火を止めずに具材が煮えたぎる鍋にルウを入れてしまうと、ルウ表面のデンプンが糊化して膜を作り、ダマになってしまい、ルウを溶けにくくしてしまうのだ。ルウが溶けなければ、当然とろみもつかない。
なのでいったん火を止め、鍋の温度を下げてからルウを入れるのだ。火を止めて木ベラなどで軽くかき混ぜれば、すぐに90℃以下になる。そしてルウを入れたら、すべてが溶けるまで火を止めたままゆっくりと混ぜる。この時点でけっこうとろみがついてくるはずだ。
ルウを入れたら再び加熱するのはなぜ?
次に気になったのが「再び弱火でとろみがつくまで時々かき混ぜながら約10分煮込みます」の部分。火を止めてルウを溶かしたら、それなりにとろみがついたので、もういいんじゃないかな? とも思うのだけれど、そのあと10分も煮込むのはなぜなんだろう?
小麦デンプンは、加熱するとすぐに粘度が上がる片栗粉で使われているような馬鈴薯デンプンと違って、粘度が上がるまでに時間がかかる性質がある。なので、ルウを90℃以下の鍋に入れてかき混ぜた程度じゃ、十分な粘度が得られないのだ。
そこで、ルウを完全に溶かし込んだ鍋を再加熱する必要がある。小麦デンプンの糊化温度を保つために弱火にかけ、十分に時間をかけて加熱。すると小麦デンプンの粘度が徐々に上がってきて、さらにとろみがつくというわけだ。
この再加熱が必要な理由を「カレーの水分を蒸発させてとろみをつける」のだと思っている人も多いようだけれど、実はこんな理由だったのだ。
ハチミツを入れるのは、なぜルウを入れる前?
これさえわかれば、もう”とろみがつかない問題”も解決! と思ったら、手順の下に赤字のカコミでこんなことが書かれていた。
「はちみつを使用する場合は、ルウを入れる前に、具材と一緒に、沸騰後弱火~中火で20分以上煮込んでください」
なんで最後に入れるんじゃダメなんだろう? しかも、20分以上も加熱しなければいけないだなんて……
実はハチミツには「アミラーゼ」という酵素が含まれていて、デンプンを分解する働きがある。なので、せっかくとろみがついたカレーにハチミツを入れてしまうと、とろみを弱くしてしまう。
それを防ぐために加熱して、アミラーゼの働きを止める。それには約20分ほどかかるということなのだ。
アミラーゼを含む調味料は、ハチミツのほかに、味噌やしょう油もある。隠し味に味噌やしょう油を入れている人は、もしかするとカレーが汁っぽく仕上がっているんじゃない?
また、唾液にもアミラーゼが含まれているので、味見をしたお玉やスプーンをそのまま鍋に戻してしまうと、同様にとろみが弱くなることがある。少量の唾液でも影響を受けるので、味見をしたらきちんと洗ってから使うか、小皿に入れて味見をするようにしよう。
カレーも、ただ漠然と作るんじゃなくて、こんな理由があることがわかれば、もっと上手に作れるはず! さっそく今日の晩ご飯に、しっかりととろみのついたカレーを作ってみよう!