NHKアーカイブスで自分の過去と社会現象を重ねてみよう

NHKアーカイブスの中には「自分史年表」というコーナーがあり、自分の生まれた年を入力して、豊富なドキュメンタリー資料で自分の過去を振り返ることができます。

NHKの開局は昭和元年(1926年)。ただしこの頃はラジオ局であり、テレビの本放送が開始されるのは、昭和28年(1953年)のことです。それ以来の記録がすべて残っているわけではありませんが、それでも、NHKにはかなり量の映像資料が残されていています。

それらの資料のダイジェストを見ることができる貴重なサイトが「NHKアーカイブス」です。
「NHKアーカイブス」のオンラインサイトでは、保存されている番組・ニュースから、テーマ別に約2万5,000本のダイジェスト映像を見ることができます。これだけあれば、資料探しのサイトとしても十分活用できますね。

さて、この「NHKアーカイブス」の中には「自分史年表」という面白いコーナーがあります。自分の年齢を入力すると、生まれた年を中心として、自分の生きてきた軌跡を映像ドキュメンタリーとともにたどることができるのです。

歴史の中の自分

たとえば、私は1960年生まれの61歳(数えでは62歳)です。
「自分史年表」を開くと出てくる「あなたの年齢は?」という質問に対して、「62歳」と入力すると、あなたが生まれた年として昭和35年(1960年)が表示されます。

▲「62」と入力し、スタートボタンをタップする

1960年の出来事として、まず「60年安保闘争」と「社会党浅沼委員長刺殺事件」の2本が出てきます。

▲「もっと見る」をタップする

▲13本のダイジェストが表示される。各年、だいたい15本前後の映像が表示される

「もっと見る」をタップすると、「三井三池労働争議」「チリ地震津波 東北を襲う」以下、全部で13本のダイジェストが表示されます。

もちろん私はこのとき0歳児ですから、これらの事件は記憶にありません。私にとっては歴史的な事実です。この年に「ダッコちゃんブーム」などというのもあり、「なんだか覚えているような気もするが、あれは後付けの記憶だったのか」と判明したりもします。

「池田首相が語る 国民所得倍増計画」というダイジェストもあり、日本がバブルに向かって登り始めた時期だということがわかります。
1964年の映像をみると、「東京~大阪4時間 東海道新幹線開通」のニュースがトップにきます。私は4歳。覚えているかどうか、微妙なところです。

一気に飛んで、1972年。「沖縄返還」「日中国交正常化」ときて、この頃まで沖縄は返還されていなかったのか!と驚きます。この年、私は小学校6年生ですから、さすがにこの頃からは自分の中の記憶とダイジェストがリンクし始めます。私が12歳の時に田中角栄氏の第1次田中内閣が成立し、14歳の時に金脈問題で退陣します。高校に入った16歳の時には「ロッキード事件で逮捕」。

こうやってみていくと、大きな事件があった時の自分の状況が浮かんできたりもして、なかなか目が離せません。
自分史を書いてみようと思い立ったときには、ぜひとも参照したいデータ群です。

過去にもさかのぼれる

面白いのは過去にさかのぼり、歴史的な事件と自分が接続することです。
たとえば、「第五福竜丸 ビキニで被ばく」という歴史的な事件がありますが、これは1954年のこと。私が生まれるたった6年前でしかありません。
また、意外なことがわかったりもします。

▲上にスクロールしていくと過去が観られる。1954年のダイジェスト

NHKの本放送開始が1953年ですから、それまでは日本にテレビというものはほぼなかった、というのは驚愕の事実です。試験放送開始が1950年で、翌1951年に「第1回 NHK紅白歌合戦」が放送されていますから、NHK紅白歌合戦の最初はほぼ誰も見ていなかったということになります。

戦争中の映像もわずかですが、残されています。「特別攻撃隊出撃」は1945年(昭和20年)のダイジェスト映像ですが、歴史的な記憶である「特攻」も、たかだか私の生年の15年ほど前の事実でありました。

▲さかのぼれる最大の過去が大正14年

この「自分史年表」、大正14年(1925年)までさかのぼることができます。最初のダイジェストは「ラジオ放送開始」というニュースです。
それ以前はラジオさえなく、マスメディアといえば、新聞だけだったのですね。

NHKアーカイブスのデータベース

この他にも、「NHKアーカイブス」はさまざまな映像のダイジェストを検索して視聴することができます。
検索はフリーワードに対応しているので、興味のある出来事、人物などを入力してみるのもいいですし、ジャンルや放送年でも検索できます。
自分の10代の頃の番組をリスト化してみるといったこともできるわけです。

▲「放送史」を放送年で検索する「放送年で探す

また、面白いのは、NHKのテレビ番組表を検索する機能です。
自分の生まれた日や、とくに記憶に残っている日の番組表を表示してみると、その時代の世相が出ていて、楽しくなります。

▲番組表と番組情報を表示できる「NHKクロニクル

見逃し番組を見るには「NHKプラス」

「NHKアーカイブス」は放送史の記録ですから、番組全編をみることはできませんし、現在の番組についてはフォローしていません。
現在放送されている番組の同時配信や一週間までの見逃し番組配信を行っているのは「NHKプラス」です。ブラウザで利用することもできますが、スマートフォン用には専用アプリも提供されています。

▲「NHKアーカイブス」は登録なしで利用できますが、「NHKプラス」を視聴するには、会員登録が必要です。

・「NHKプラス」のAndroid版はこちらから

・「NHKプラス」のiPhone版はこちらから

ざっくりとですが、NHKの提供している放送史について紹介してきました。戦後すぐあたりからの歴史的映像の雰囲気をつかむことができて、たいへん便利です。また、細かな番組表と番組情報の提供も、調べごとをするのに役立ちますね。
各民放局にもこのようなサービスがあると便利なのですが……。

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深川岳志

1960年、兵庫県生まれ。大学時代はSF大会(Daicon3、4)の運営にのめり込む。卒業後、編プロを経てITライターに。ショートショートを書くのが趣味。note:https://note.com/fukagawa