USB PD機器選びで失敗しないようにするポイントとは?

パソコンのようにパワーの必要なものでも充電できるモバイルバッテリーが登場しています。これは、「USB PD」規格のおかげ。でも、USB PDとは一体何でしょうか。またどのようなポイントをチェックすれば、失敗せずに済むでしょうか。


最近よく目にするようになった「USB PD」(単にPDとも)という表記。モバイルバッテリーや充電器のパッケージ、レビュー記事、新製品発表のニュースなどで使われていますよね。

USB PDで充電できるパソコンや、給電できるモバイルバッテリーもありますが、必ずしもすべての組み合わせで機能するわけではありません。自分の端末を充電できるPD製品をどのように選べるでしょうか。そもそも、PDとは一体何なのでしょうか。

USB PDは最大100Wで給電できるUSBの規格のひとつ

USB PDとは「USB Power Delivery(パワーデリバリー)」を略したもので、最大100Wの電力をUSBケーブルで給電できる規格のことを指します。USB関連の仕様を標準化するUSB-IF(USB Implementers Forum)という団体によって策定されました。国際標準規格なので世界中どこへ行っても同じです。

USBの規格は、1996年に登場してから着実にバージョンアップしており、1.0ではデータ通信のみで給電能力がありませんでしたが、2.0で5V・0.5A(2.5W)の電力を供給可能に、3.0では5V・0.9A(4.5W)へとアップ。とはいえ、電圧は5Vに固定されていました。

ところが、2.0バージョンから20倍以上の電力消費をまかなえるようになった3.2 Gen 2と呼ばれるバージョンでは20V・5A(100W)にまでアップ。5Aの電流を最大に、5V、9V,15V、20Vという4段階の電圧と組み合わせられるようになったのです。

ちなみに、USBにはさまざまなコネクターの形状があります。代表的なものでは、ほとんどのパソコンに搭載されているUSB Type-A、それを少し小さくしたmini USBスマートフォンに搭載されているMicro USB、USB Type-Cなどです。

でも、USB PDに対応しているコネクター形状はUSB Type-Cのみ。給電口がUSB Type-Aのもの、またケーブルの一端がUSB Type-AのものではPDに対応していない、ということを覚えておきましょう。

「PD」と表示していても中身はいろいろ!

PDでは、最大100Wまでの電力をUSBケーブルを通じて行えますが、給電する側のモバイルバッテリーやポータブルバッテリー、さらにはコンセントに挿す充電器であっても、必ずしも100W給電に対応しているわけではありません。

というのも、5V・3A,つまり流せる電力が15Wのものでも20V・5Aの100WのものでもUSB PDと表記できるからです。そして、USB PD表記しているものでも、100Wの給電に対応している充電器やモバイルバッテリーが現段階では多くないのも事実です。

そのため、自分の使い方にマッチしたUSB PD充電器やモバイルバッテリー、ケーブルを選ぶ必要がある、というわけです。

充電したいアイテムごとに異なるPD機器の選びかた

スマホだけならどのPD対応機器でもOK

最近のスマートフォンの中には、「急速充電対応」「高速に充電できる」ものが増えてきています。より多くの電力を供給できるUSB Type-C端子が標準になりつつあるからでしょう。忙しいときなどには短時間で少しでも多く充電できるようになったので、これは助かりますね。

では、そのようなスマートフォンを“急速に”充電するにはどのPD対応機器を選べば良いでしょうか。

結論から言えば、「PDに対応しているモバイルバッテリーやケーブルならどれでもいい」です。

というのも、PDでは「パワールール」というものが定められており、5Vの電圧では最大15Wを供給できますが、それ以下の電力しか受け付けない充電側(ここではスマートフォン)の受電能力に合わせるよう設計されているからです。

供給側と受給側、つまり出口と入口のところで「これだけの電力を送れるけど、大丈夫?」「いやいや、うちではこれだけしか受け入れられませんよ!」「じゃあ、あなたが受け入れられる分だけ流しておきますね」とやり取りをしているということですね。

そのため、USB-IFの認証を受けたモバイルバッテリーや充電器、ケーブルであればどのPD機器を選んでもOKなのです。
もっとも、スマートフォンに充電用のケーブルや充電器がついているなら、それらを使うことをオススメします。余分な出費も抑えられますし、最適なものとなるよう設計されているので故障の発生も抑えられるからです。また、スマートフォンを充電するだけのために「トゥーマッチ」なものを購入しても、やはり費用がかさむので、PDは「最大18W」程度のものがオススメです。また電力容量の大きいもののほうがコスパに優れています。

写真のcheero Flat 10000mAh with Power Delivery 18Wは、10000mAhの大容量でも販売価格は3,980円

ノートパソコンを充電したいなら最大ワット数に注目

では、ノートパソコンを出先で充電したいという場合はどうでしょうか。この場合、手持ちのノートパソコンについてきた充電器を調べれば、最大の判断材料を得られるでしょう。

例えば、45Wと書いてある、出力(Outputまたは輸出)の欄に15V・2Aと書いてあるなどです。

それらの表記より大きめの数字が書いてあるものを買えば良い、というわけです。

また、メーカーによっては仕様書のページで最大消費電力やスリープ時の最小消費電力などを明示しているところもあります。そのような数値が参考になりますね。

例えば、上に挙げたのは「LAVIE Pro Mobile(2019年発売)」の仕様書の一部。最大消費電力が約45Wとなっているので、45Wまたはそれ以上の出力に対応しているモバイルバッテリーや充電器、ケーブルをそろえると良いということになります。

USB PD対応の充電器やモバイルバッテリーでも、供給電力が小さいと、充電ではなく、「給電」になってしまいます。給電では、消費する電力に対し供給量が足りず、じわじわと残量が減っていくことに。

▲「充電」ではなく「給電」になっている場合、Windowsでは「!」マークが表示されます(左側が、正しく充電されている状態)

▲「充電」ではなく「給電」になっている場合、Macでは電池アイコンの中が黒く塗りつぶされた表示になります(左側が、正しく充電されている状態)

繰り返しになりますが、PDと表記されていれば定められたパワールールに則って、受け入れ性能を上回る電力を無理に供給することはありません。なので、最大ワット数が大きめのものを選んでおけば、ノートパソコンを買い換えることになったとしてもそれらの機器を使い続けられるというわけです。

100均のケーブルは大丈夫?

USB Type-C端子(差込口)を持ったスマートフォンが増えてきたことから、100均でも充電用のUSB Type-Cケーブルを置くようになりました。これらは、PD対応の充電器やモバイルバッテリーに挿して使うことができるのでしょうか?

実は、USB Type-Cの形をしているからといって、どのケーブルでもPDに対応しているとは限りません。そのため、購入時にはパッケージを良く確認しましょう。「5V3Aに対応」「最大5V2.4Aで急速充電!」などと表記しているはずです。表にない場合は裏面を確認します。「USB PD対応」と表示されていなければ、PD対応の機器に接続するのは止めておいたほうが良いでしょう。

それは例えるなら、細いホースに無理やり大量水を高い圧力で流そうとするようなもの。ホースが破裂してしまうように、火災や故障の原因になりかねないからです。

充電器やモバイルバッテリーに付属のケーブルを使うか、「USB-IF正規認証」のロゴがあるケーブルを選びましょう。

▲認証を受けたものが45W対応のものであれば、上図のようなロゴになります

まとめ

USB Power Delievryは、最大100Wの電力を供給できるUSB-IFが定めたUSB規格のひとつ。USB Power DelievryまたはUSB PDと機器に表記するには同団体のテストに合格する必要があります。

安全のためにパワールールが設けられており、電力受給側が受け入れられないほどの電力を流さないので、USB PDと表記されている充電器やモバイルバッテリーの最大ワット数が自分の持っているスマートフォンやノートパソコンより大きくても安心して使えます。

とはいえ、最大ワット数が大きければ大きいほど価格も高くなりがちなので、「ギリギリではないけど、ちょっと数字の大きめのもの」を選ぶのが良いでしょう。

ケーブルには気をつけましょう。コネクターの形がUSB Type-Cであっても、電力量に耐えきれないことがあるからです。USB PD機器に付属のケーブル、またはUSB-IF正規認証品を選ぶようにしたいものです。

正しい組み合わせのものを選べば、最高の充電ライフを安心・安全のうちに過ごせるのです。

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渡辺まりか

デジタルガジェットをこよなく愛するフリーライター。専門学校で約10年の講師経験あり。小型船舶操縦士免許2級、乗馬5級、普通自動二輪免許など趣味多し。