雨の日の泥はねは、気をつけているつもりでも気づくといくつもついていて、お気に入りの洋服や中々洗えないスーツなどの場合には、本当に憂鬱になるものですよね・・・。
そもそも、”泥はね”はなぜ起こるのでしょうか。
「人は片側の足の指で地面を蹴り出すと同時に、反対側の足を振り出して前へ進みます。このとき、靴についた泥水がその足や反対側の足へ大きく飛び、ズボンやストッキングに泥がついて汚れてしまうのです」
そう教えてくれたのは、俣野好弘さん。靴合わせの専門家である「シューフィッター」を養成・認定している『足と靴と健康協議会』の主任研究員で、ご自身も「上級シューフィッター」です。
「私の長年の経験からお話しすると、泥はねを防ぐポイントは大きく2つ。靴のフィット度合いと、歩き方です。特に、雨の日は靴選びが非常に重要ですね」
泥はねしづらい靴の選び方って?
「靴が足にピッタリとフィットしていないと、地面を蹴ったときに靴が揺れ動いて、泥がはねやすくなります。サイズが大きすぎるなど、靴と足の隙間が広ければ広いほど、泥はねのリスクは上がります」と俣野さん。
靴のサイズが合っていることは大前提として、「雨の日はフィット感を重視し、足を靴に固定できるものを選ぶのがベスト」とのこと。
例えば、男性用のビジネスシューズは、足をすべり込ませて履くだけの「スリッポン」と呼ばれるもの(写真・左)と、足を入れた後に甲で紐を縛る「紐靴」タイプ(写真・右)がありますが、雨の日はサイズ調整がしやすい紐靴を履くのが正解。
女性用のパンプスも、つま先だけを覆うもの(写真・左)よりも、甲にベルトがあるもの(写真・右)を選ぶと◎。ヒールは4.5cm程度の「中ヒール(3cm以下のローヒールと、6cm以上のハイヒールの間)」の靴が安定して歩きやすいので、泥はねもしづらいのだとか。
正しい履き方&「パッド調整」でさらにフィット感アップ!
俣野さんによれば、靴の履き方によってもフィット感は変わってくるのだそう。
「靴を履くときは靴べらを使って、靴のかかとに足のかかとを合わせてから、靴のかかとをトントンと数回地面に当ててください。この一手間をしてから、紐やベルトで固定すると、歩いても必要以上に足指が動くことがなく、フィット感を高めることができます」
さらに靴をフィットさせるには、靴用パッドが有効とのこと。特に、女性用のパンプスでヒールが高い場合には効果絶大なんだそう!
「パッドは靴の底に敷かれた敷き革をはがして入れます。かかと部分をあけて、内側のかかと寄りに大きめのアーチパッドを、外側に小さめのものを、それぞれ両面テープで固定し、その上から敷き革を戻します。こうすることで、かかとの前に引っ掛かりができるので、足が前にズレなくなります」
実際、私の履いていた靴にパッドを貼っていただきました。
※位置がわかるよう、敷き革の上にパッドを貼っています。
靴用パッドを貼る前後で靴を履き比べて見ると、明らかに貼った後の方が靴が脱げづらい! 貼る前はつま先側に足が滑るのを感じていたのですが、貼った後は重心がしっかりかかとに乗っているのを感じることができました。アーチパッドを貼るだけでこれほど変化がでるなんて、驚きです・・・!
「靴用パッドは、靴屋のほか『東急ハンズ』などでも種類多く取り扱っています。左右2枚セットで200~300円程度ですので、フィット感に問題を感じているのであれば、購入してみてはいかがでしょうか」
男性用の革靴では、甲の当たる部分の靴の裏側に、スポンジやフェルトを貼って甲と靴の間の隙間を埋めるそう。また、履き口が広がってパカパカするような場合には、土踏まず全体に山なりのパッドを挿入して甲を持ち上げることで、より靴にフィットさせることができるようです。
「上手くパッドを利用することで、履き心地もよくなり、靴が生きてきます。靴店やデパートの靴売り場にはシューフィッターが常駐している場合が多いので、もしご自身で調整するのが難しい場合には、いつでも声をかけてください」
泥はねしないスマートな歩き方とは?
靴の準備ができたら、残るはいよいよ「歩き方」・・・!
「勢いよく歩く人ほど泥はねがひどくなる、というのは想像に難くないと思います。歩幅を広くとって腕を大きく振りながら地面を蹴って歩く、ウォーキングの歩き方は、泥はねしやすい歩き方の典型です」と俣野さん。
運動を目的としたウォーキングは、どうしても動作が大きくなりがち。どうやら泥はねしない歩き方は、ウォーキングの歩き方とは対極にあるようです。
「泥はねを防ぐには、小股で地面を踏みしめるように足を上下に動かして歩く『ちょこちょこ歩き』が理想的です。急いで歩くのもダメ。麦踏みをするようなイメージで、足を静かに上下することを意識しながら、いつもよりもゆっくり歩きましょう」
俣野さんいわく「雨の日の歩き方のポイントは、雪道や凍った道の歩き方と同じ」だとか。『エンジョイ!マガジン』でも以前に雪道を転ばずに歩くコツをお伝えしましたが、なるほど、「小股で歩く」「足の裏全体を使う」など、確かに通じる部分が多そうです。
「ご年配の方に多い、足をあまり上げずに、前後にスライドさせるように動かす『ペタペタ歩き』も、普通の歩き方よりは泥はねを防げます」
これで、雨の日の泥はね対策は完璧♪ ぜひ次の雨の日に試してみてくださいね!
おまけ:雨に濡れてしまった靴のお手入れ法
雨は靴、特に革靴にとっては大敵! 濡れた靴をそのまま放置すると、靴が傷んだり、カビが生えるなどのトラブルも・・・。そこで最後に、俣野さんに靴のお手入れ法も教えていただきました。
「雨で濡れた靴は必ず布で拭いてから、風通しのいい場所で陰干ししてください。特に紳士靴は履き口が狭いので中に湿気がこもりがちです。靴の内側にドライヤーを熱風ではなく送風にしてあて、しっかり乾かしましょう」
「私たちの足は1日でコップ1杯分の汗をかいています。ジメジメした梅雨時は、3日に1度は履く靴を変え、履いた靴は干してしっかり乾燥させるように心がけてください。湿気は下にこもりやすいので、よく履く靴は空気の流れがあり、湿気の少ない、靴箱の上部に置くようにしてください」
足にフィットした靴を履くことや、靴をしっかりお手入れすることは、最終的に自分の足の健康にも影響すること。これを機にぜひ正しい靴の選び方・お手入れの仕方を身につけましょう!
【取材協力】一般社団法人 足と靴と健康協議会