「人は誰だって組織の一員(Member)」をコンセプトに、グループなど組織に所属する一人にスポットを当てるドキュメント企画「Member」。第七弾は九州発のアイドルグループ・LinQ所属の杉本ゆささん。5周年を迎える中で彼女がたどり着いたLinQにおける立場、に迫ります。
※前回の記事はこちら
福岡で芸能活動がしたい。福岡の看板娘になりたい。
そう思ってLinQに入った杉本ゆさ。ところが個人としての目標や夢が次々と叶うにつれて、ある疑問が生まれ始めた。
「夢が叶った一方で現実を知ったというか。いざLinQから飛び出してみたら”ここは違うかもしれない””私はここじゃないかもしれない”って思ったんですよ。このことについては正直悩んだ、というより今もまだ悩みで…」
彼女はそう口を閉ざすとしばらく沈黙が続いた。
やがて「なんか、」と言葉を発した。まるで意を決したかのように、話し始めた。
「去年12月の生誕公演の時、私って何をするべきなのかな、というのをとても考えていたんですよ。私は早く一人の仕事がしたい、LinQがあるけれど一人でやりたいと最初は思っていて。でも最近気づいたんです。私が本当にしたいのはライブやん、と。だから、生誕公演のMCでも言ったんです。レギュラーの仕事はいりません、って。LinQでライブがしたいからライブを引っ張る人間でありたいんですよ。LinQ”に”注ぎたいんですよ、今を。だから変わったんですよ、私の考えがかなり」
彼女に訪れた思考の変化。そのきっかけの一つが、LinQが東京で定期的に行っていたプロデューサー公演を担当したことだった。ファンからの評価も高く、もっとライブを変えられる人間になりたいと思うようになった。
「もっとLinQを愛せる人間になりたいなと思って。LinQってメンバーそれぞれ女優やモデルになりたかったり、テレビ・ラジオのレギュラー、という目標があるのですが、でも基本はLinQであるべきで。そこを大事にしている、LinQだけを見ているのはリーダーの(天野)なつしかいない、とあさみさん(※)が思っていて。私もそっち(の立場)やん、と思うようになったんです。だからもっとライブがしたいんですよ。ふふふ。変わりましたねこの一年で」
※…LinQの初代リーダー。現在はプロデューサー(仮)としてLinQに携わっている。
今年1月から2ヶ月近くにわたって行われた、全国各地を巡るLinQの出前公演(ツアー)は、彼女にとって久しぶりの大がかりな遠征だった。遠征メンバーとして帯同し、多くのライブを行う中で、ライブへの考え方も変わった。成長できた。もっと楽しいライブができるという自信もできた。でも「やりきった」という満足はあるが、「これでいい」と満足はしていないと彼女はいう。この取材をしたときはまだ出前公演を終えてからベストホールには出ていなかったため、「早くベストホールの舞台に立ちたい」、そんな抑えきれない思いが伝わってきた。
もっとライブをしたい。それは遠征に出るだけでなく、LinQが毎週末定期公演を行うベストホールでのライブにもっと出たい、ということでもあった。結成から5年にわたって行われてきた定期公演は、この4月に800回を迎えた。おそらくだが、LinQを変えるにはライブを変える、つまりベストホールを変えることがLinQが変わる、という考えも彼女にはあるのだろう。ただ、彼女の考えはそれだけではなかった。
「私はLinQをもっと福岡で固めたいなと思っていて。福岡で知名度を100%にしたいですね。東京でのアイドルイベントは人がたくさん集まって、LinQの評価も高くてうれしいのですが、ベストホールに帰ってくると”あれ?あれは夢だったのか?”と思うんですよ。ベストホールに人が来るということは、福岡の知名度が上がって、LinQのライブ見に行きたいという女の子だったり、福岡のいろんな方に興味を持っていただけたということですから、もっとお客さんの数を増やしたいんです。
LinQって年齢幅も広いからいろんな分野で活躍していますし、いわゆる”ブリブリのアイドル”ではないじゃないですか。だから福岡を盛り上げている女の子たち、という、アイドルのカテゴリーを外して見てもらえるようになりたいですね」
それは何より、杉本ゆさ個人として仕事をしてきたからこそ、の言葉なのだろう。彼女自身もブリブリのアイドルというよりは、福岡のタレント、何より女の子として、福岡のテレビやラジオ、そしてグラビアで活躍してきた。幅広い分野で活動することの大切さを彼女は身を持って痛感している。
「だからメンバーにはそれぞれいろんな場面で活躍して欲しいし、その結果いろんなところでLinQを見てもらって、一人のメンバーでもいいから好きになってもらえるような活動をもっと福岡で、そして九州でやるべきだなって思いますね。そして、そのような活動をする中で、私は、LinQに興味を持っていただいた方がライブに行こうと思ってベストホールに見に来たときに、ライブを盛り上げられるメンバーでありたいなと」
福岡に限らずアイドルに興味のある人は、LinQの名前くらいは知っているだろう。でも、そうなった今もベストホールは埋まらない。周年ライブは1周年から同じ会場。現状を変えるにはどうしたらいいか。
そのためには、福岡の、アイドルに興味のない人の知名度をもっと上げる。LinQはメンバーそれぞれが個性的で仕事も多岐にわたっているので、たとえば地元のKBCテレビの人気情報番組「アサデス。」に出ている原直子や高木悠未をきっかけに興味を持つ人もいる。天野なつや深瀬智聖、桃咲まゆや吉川千愛のように地元のラジオ番組をきっかけに興味を持つ人もいる。福岡で生活する人たちにLinQを知ってもらう機会はたくさんある。
福岡が拠点のアイドルグループ・LinQ。
ではなく、
福岡で頑張っている女の子たち・LinQ。
いろんなメンバーをきっかけにLinQに興味を持ってベストホールに来てくれた。そこでライブを見てもっとLinQを好きになって欲しい。いわば、メンバーが営業活動をしてベストホールに人を呼び込んだときに、その人たちを満足できるようなライブをする役割を担う人が必要だ。
そしてその立場にいる人が少ないのだから、私がやらねば。
LinQで、そして杉本ゆさとして5年やってきて、至った結論。それは、自分をもっとLinQに注ぎたい、ということだった。最初はLinQの杉本ゆさ、だった。やがてり杉本ゆさ個人としての仕事が増えた。でも彼女は気づいた。私はLinQの杉本ゆさにならねば、と。彼女はいわばLinQに帰ってきたのかもしれない。
「私、3年目くらいまでは新メンバーが入ってきても”知らんし”みたいな感じだったんですよ。ライバルとかではないんです。どうでもいいんです。”やるなら上がってくれば?”みたいな。でも嫌いとかではないんですよ。新メンバーって私と同年代ではない年下だから、というのもあったのですが。
でもLinQを思うようになってから考えが変わってきて。レッスン場とかで新メンバーが一人でやっていると寄り添いたくなるんですよ。”大丈夫?教えようか”と。LinQのことを考えるようになってから変わったんだろうなと思ったし。メンバーからも”ゆさ変わったね”って言われるんです。たぶん大人になったんですよ(笑)」
若いときは誰しも自分のしてきたことを恥じることがある。若気の至りとでも言おうか。あるときそんな自分に気づいて、自分が恥ずかしくなることがある。彼女の笑いを見て、ふとそう思った。今の私は今までの私ではない。だからこそ、過去の私を笑える。「そんなこともあったな」と。
「自分で言うのも何ですけれど、メンバーからの信頼もあるなって思います。(高木)悠未も”ライブはできるだけゆささんとしたい”と言われるし、誰にでも必要とされるような人間になってきているのかな、と思うとそれも自信になっているので、私はもっとLinQにいたいなと思います」
2016年の新春公演で杉本ゆさが一年の計として掲げたのが「バランサーになる」だった。運営とメンバー、そして年長メンバーと年少メンバーの間でバランスを取り、組織をまとめていく。組織にはそういう人が絶対必要だ。そして彼女はそれこそが私の役割だと気づいた。
ベストホールのライブをもっと盛り上げていくために。
そして、LinQをもっと大きくしていくために。
かつて、プロ野球界にある左投手がいた。私が物心ついたときからその投手の大ファンだった。3球団を渡り歩いたその投手は、球界を代表するエース、というわけではなかったが、貴重な左腕として二ケタ勝利を何度も記録するなど各球団でローテーションで活躍した。目立つ投手というわけではなかったが、10年以上も活躍し続けた、知る人ぞ知る投手だ。
彼女の生き方に、そんな左投手の姿を重ねてしまうのは私だけだろうか。
【Member #7】杉本ゆさ 所属:LinQ
生年月日:1991年12月13日 出身地:福岡県
2011年にLinQ1期生としてデビュー。福岡のウマカラ調味料・ソースコの親善大使「ソース娘。」として活躍中。愛称はゆさぽよ。
杉本ゆさの「ソース娘。」
http://kiyotoku.co.jp/gravure/
杉本ゆさオフィシャルブログ「杉本ゆさのあげぽよLIFE」
http://ameblo.jp/yusa-sugimoto/
(おわり)
ライブ情報
2016年5月8日(日)1部
第811回 髙木悠未Birthday公演「5月ハチ日生誕祭!!ハッチーバースデージューキュー♪」
毎週末、福岡・天神ベストホールで定期公演を開催。
公演情報はLinQオフィシャルサイトにてご確認ください。
http://loveinq.com/
リリース情報
LinQ 13thシングル「Supreme」
発売日:2016年3月23日
【通常盤】linq11007 \1,200(税込)
1、Supreme
2、Sweet Dream
3、ポ!ジ!ティブ!!(映画EDIT)
4、Supreme (Instrument)
【楽曲派盤】linq11008 \1,200(税込)
1、Sweet Dream
2、Supreme
3、キミがいたから(映画EDIT)
4、Sweet Dream (Instrument)
【初回限定盤】linq11009 \1,200(税込)
リバーシブルジャケット仕様
1、Supreme
2、Sweet Dream
3、青い珊瑚礁(映画「みんな好いとうと♪」挿入歌)
LinQオフィシャルサイト
http://loveinq.com/