LinQ・新木さくら「京都の夜に流した涙の先」(1)【Member】

エンジョイ!マガジンの新企画がスタート!「人は誰だって組織の一員」をコンセプトにしたその名も「Member」。グループなど組織に所属する一人にスポットを当てます。

「エンジョイ!マガジン」の新企画「Member」。「人は誰だって組織の一員(Member)」をコンセプトに、グループなど組織に所属する一人にスポットを当てるドキュメント企画です。
第一弾で登場するのは、九州発のアイドルグループ・LinQに所属する新木さくらさん。彼女を大きく変えた京都の夜のできごととは。

2015年2月28日、京都。5日の北海道・札幌を皮切りにスタートした全国12カ所を回るツアーをこの日終えたLinQの5人は、ライブ終了後打ち上げを行っていた。達成感と疲労感に満たされ思い出話に盛り上がり、楽しくご飯を食べている中、新木さくらだけは一人無言でうつむいたままだった。
「どうしたと?」見かねたツアーメンバー最年長の大庭彩歌が声をかけると、彼女は重い口を開いた。話しているうちに、涙が止まらなくなった。
「この5人のうち私以外の4人だけが成長しているな、自分だけ成長していないなと思ったんです。」そう口を開いたのは、それからちょうど3ヶ月たった5月28日の東京・AKIBAカルチャーズ劇場の楽屋。奇しくもこの日の公演は、その5人のメンバーだけが京都以来再び集結するというもの。開演前の緊張感が漂い始める中、結果的に彼女に3ヶ月前の夜のことを思い出させてしまった。
新木さくらは1996年11月14日生まれ、18才。小学1年生からダンスを習い、ダンスチームではセンターだった。自分が踊ることで周りから「ダンスうまいよね」「すごい」と言われることが何より楽しかった。
「その頃から『芸能人になりたい!』って思ってました。でも踊ること、目立つことが好きで、誰かに憧れていたとかではないんです。」
彼女がLinQに出会ったのは2012年11月。後に共に加入することになる妹・新木こころに連れられて福岡・天神ベストホールで行われている定期公演を見に行ったのがきっかけだった。芸能人にはなりたかったが、アイドルには興味がなかった彼女。ところが、初めて見たLinQのライブに鳥肌が立った。
「『なう。』で伊藤(麻希)さんが煽っているのを見て『うわっ、すごい、この人がLinQのセンターなんや』って思ったんですよ。その後、年明けの『楽詣』も見に行ったんですよね。そしたらセンターにいるのが小さい子(髙木悠未)で『えっ、あんな人だったっけ?』と。伊藤さん、髪切っていたんですよね。だからわからなくて。」
伊藤麻希の煽りに衝撃を受け、「楽詣」では天野なつ(現リーダー)の「フクオカ好いとぉ」での、笑顔がはじけながらの力強い動きに憧れをいだいた彼女。ブリブリしたりキャピキャピしているのがアイドルだと当時思っていた彼女に、その光景は何よりまぶしく映った。自分もLinQに入ってステージに立ちたいと思った彼女は、それをきっかけに妹とオーディションを受ける。見事合格し、LinQに加入したのは2013年8月。それから徐々に存在感を発揮し、今では遠征などにも欠かせないメンバーとなっている。
■「引っ張っていく気持ち」の自問自答
これまでの彼女の過程の中で欠かせないのが、2014年11月に行われた彼女の生誕公演。チケットが発売当日に完売するなど満員のファンで埋まったベストホールで彼女は「私がLinQを引っ張っていく気持ちで頑張ります」と宣言。リーダーでもセンターでもない彼女が突然発したその言葉に、誰しもが驚いた。
「『引っ張る』というのはずっと思っていたけれど、言うのは恥ずかしかったんですよ。メンバーに何か思われたりせんかな、と。私、そっち系なんで(笑)。でも『ここで言っちゃおう』と思って。誰にも言ってなかったのでメンバーもびっくりしてました。けど、できているかなあ、というのはあれからずっと思っています。
…自分でもわからないんですよ、どうやって引っ張っていったらいいか。わからないのに言ってしまって。でも言った方が自分を追い詰めることができるので。有言実行型なんです。私が引っ張るって言ったから、それは絶対口だけでは終わらせたくないし。」

目立つことは好き。「でも遠慮するタイプなんですよ。出たがりだけど出られない、みたいな(笑)」


それは中心メンバーの一員としての自覚がもたらした言葉だったのか。ただ、加入から1年がたち、LinQとしてもメディア露出や注目度が増える中、彼女はだんだん壁の存在に気づく。
「デビューしてから今まではずっと”汗をかいて何の曲でも笑っている新木さくら”だったのですが、18才になって高校を卒業して…普通の子だったら大人、じゃないですか。だから表情とかもいろいろ、笑うだけじゃない新木さくらを見せたいなと思って。」
───何かを変えなければ。でも、何を?
「引っ張る」宣言が壁をより高くしてしまったのかもしれない。その壁が彼女に立ちはだかったのが、2月から行われたサーキットツアーだった。このツアーはLinQのメンバーの中から選ばれた大庭彩歌、坂井朝香、山木彩乃、新木こころ、そして新木さくらの5人が、北海道や福島、千葉、三重等々、九州を拠点に活動するLinQが普段なかなか行かない都道府県に出向くというもの。この間は福岡に戻ることもなく、常に5人一緒に約1ヶ月、車で移動して、ライブをして、そしてまた移動…文字通りライブ漬けの日々だった。
「毎日ライブをしていたら、だいたい同じような方がいらっしゃるんですよ。そしてセットリストもそんなに変わらないし、(同じ5人なので)フォーメーションも変わらない。となるとファンの人も飽きてくるじゃないですか。なので私たちも飽きられないようなライブを考えたりしました。でも、どうしたらいいかわからなくなったときに、私はどうしたら楽しませられるかなって。そのとき、私のパフォーマンスが一定だなって思ったんです。」
5人で苦労を重ねる中、無事ツアーは終わった。彼女なりに手応えもあった。ところが他の4人と比較したときに自分は…それが、冒頭の京都での号泣につながった。
「『これはやばい』と思って。パフォーマンスを変えなきゃなと。」
実は彼女はツアー中に大きなヒントを手にしていた。「ファンの人を楽しませるには自分が楽しむことが一番だよ」。ツアーの終盤でファンに言われたこの一言が、彼女にとっては運命的な言葉だった。
「そこから、ファンの人より誰より自分が一番ライブを楽しもうと思ったんです。」
それはもしかしたら、悩む彼女を見かねたファンからのアドバイスだったかもしれない。ステージ上から迷いが伝わっていたのかもしれない。ファンよりもメンバーよりも誰よりも楽しむ。4月の4周年ライブ、そして5月のゴールデンウイークスペシャル公演では、3月に見た頃とは打って変わって、表情豊かな、見ている方まで楽しくなってしまうほど、ライブを楽しんでいる新木さくらの姿があった。
「だから役割的に、私は誰よりも本当の、自分が感じたままの楽しさを表現できるんじゃないかなって思います。」
それは、彼女の出した一つの結論だった。
(続く)
続編を公開しました。

【Member #1】新木さくら 所属:LinQ
生年月日:1996年11月14日 出身地:福岡県
2013年8月に5期生としてLinQに加入。愛称はさあちゃん。LinQメンバーの新木こころは妹。

■ライブ情報

LinQ LIVEHOUSE CIRQUIT 2015 SPECIAL まだまだ終わらんLinQの「わ」大作戦!!
【出演メンバー】
天野なつ、一ノ瀬みく、松村くるみ、大庭彩歌、木村早希、由地成美、髙木悠未、坂井朝香、新木さくら、新木こころ、山木彩乃 
2015年7月2日(木)大阪 梅田クラブクアトロ
 OPEN 18:30 START 19:00
2015年7月4日(土)名古屋 栄 RAD HALL
 ①OPEN 13:30 START 14:00 ②OPEN 17:30 START 18:00
2015年7月5日(日)東京 ラフォーレミュージアム原宿
 ①OPEN 13:30 START 14:00 ②OPEN 17:30 START 18:00
2015年7月11日(土)福岡 天神イムズホール
 ①OPEN 13:30 START 14:00 ②OPEN 17:30 START 18:00

■Information■
LinQ オフィシャル WEB
WARNER MUSIC JAPAN LinQ WEB

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エンジョイ!マガジン編集部