アイドルブームが終わりそう、と言われ続けた2014年、未だAKB48の楽曲はオリコンウィークリーで1位を獲得し続けている。これは2009年10月21日に「RIVER」で獲得してから5年以上にもなる。そして、ハロー!プロジェクトのモーニング娘。’14は5作連続オリコンウイークリー1位を獲得している。こちらは17年という活動歴の中で初の快挙だ。
こうしたメジャーなグループはもちろん、ローカルアイドルやライブアイドルまでも、メディアで目にすることが多くなった。「1000年に一人」なんていうアイドルが大人気になったりもした。
2014年も、やっぱりアイドル人気はすごかったのではないか? と思う。「人気」というよりも、「認知」という言葉のほうが正しいかもしれない。より多くの場面で、よりいろいろなカテゴリーのアイドルを見ることが増えた。アイドルは「自称」であるから、なりたいと思う人が増えればそれだけ増えるし、どんなかたちであれアイドルとして成立してしまう。だからこそ、周りの人が「アイドル」と認めなくてはいけない。そうした意味での認知が一般化していった結果のように思っている。
突然だが、2014年に卒業した、もしくは卒業を発表したアイドルの数は想像つくだろうか?
なんと、その数は500人近い。
正確な数字までは把握できないので、おおよそとなるわけだが、それでも1日に一人以上は卒業している計算となる。この原稿を書いているこの日も、誰かが卒業しているというわけだ。
2014年はまだまだアイドルブームが続いていたと書いた一方で、こうした事実もある。しかも2014年は、一般的にもよく知られているグループの主要メンバーの卒業が多く見られた。
卒業日順に並べていくと以下のようなメンバーだ。
2月23日 SUPER☆GiRLS 八坂沙織
6月8日 AKB48 大島優子
10月24日 風男塾 武器屋桃太郎
11月24日 アイドリング!!! 菊地亜美
11月26日 モーニング娘。’14 道重さゆみ
2015年1月1日 PASSPO☆ 奥仲麻琴
そして、知名度のあるグループ自体が解散することでのメンバーの卒業も見られた。
こちらも解散日順に並べてみよう。
6月30日 bump.y
7月8日 BiS
9月14日 AeLL.
2015年3月3日 Berryz工房
こうして見ると、かなりの人気メンバーがアイドルを卒業したとわかるし、それに合わせて相当な数のファンが応援する対象を失ったことになるのがわかる。もちろん、卒業後も芸能活動を続けていくメンバーがほとんどなので、応援できない、というわけではないが、アイドルとして応援していくのとは勝手が違うだろう。
「アイドルが卒業する」→「ファンが減る」→「アイドルファン自体が減少していく」
と考えるのが普通だ。だから、2015年はとうとうアイドルブームが終わってしまう……とはならないだろう、というのが個人的な意見。
2014年はアイドルが「認知」された年だと先述したが、それはメンバーやグループといった「個」よりも、「アイドル」という大きなくくりのほうが一般化してきたということ。個人として推している(応援している)メンバーもいるし、グループもある。でも、アイドルが好き、という人が爆発的に増えているように思うのだ。そういう人たちは「鉄道」「釣り」「フットサル」などと同じように、趣味として「アイドル」を楽しんでいるように見える。
そして、いちばん大きなことは、こうした趣味としてのアイドルを周りが認める土壌ができたということ。誰もが自然に参加できる趣味。以前なら、アイドルファンを敬遠していたいような若い女の子までもが、アイドル現場にやってくる。そして、周りと同じようにケチャしたりコールを入れたりする。昔の現場を知る人ほど、こんな世の中がやってくるとは思ってもみなかっただろう。
それはもっと前からはじまっていたことかもしれないけれど、2014年で完全に定着したように思う。この土壌はそうそう崩れるものではないだろう。
2014年10月22日に、あるアイドルの卒業ライブを見たとき、アイドルを応援することの楽しさとか深さとか美しさをものすごく感じた。POWER SPOTというライブアイドルグループの豊田早姫(とよださき)さんの卒業ライブだ。
実はこの豊田早姫という子は、AKB48の11期生でもあった。同期には川栄李奈さんなどがいる。AKB48を卒業することとなったが、アイドルになる夢を持ち続け、POWER SPOTというグループで活動を続けていた。その容姿はもちろん、振る舞いや言動など、アイドルとしての意識の高さは目を見張るものがあったし、こんな子がライブアイドルにいるんだ!? と正直驚いた。同じように思った人は多くいただろうし、きっとみな同じように「もっと活躍できたはずだ」と思っていただろう。
彼女があのままアイドルを続けていたら……と考えても仕方ないが、結局は彼女自身が終止符を打ち、ちょうど3年間という活動を持ってアイドルを卒業することとなった。卒業ライブは渋谷Gladで行われたのだが、会場は超満員。そして集まったすべての人が彼女の素質を認めて残念に思いながらも、だからこそ卒業を受け止めて送り出そうという気持ちが見えた。卒業ライブで見せた彼女の凛とした姿は、潔さを感じたし、そこに未練はまったくなかった。そんな彼女を、全員が温かく見守っていた。
そんな会場で私は「アイドルっていいな」と思っていた。彼女がいなくなっても、きっとアイドルはなくならない。いや、彼女の思いを引き継ぎつつ、アイドルはつながっていくように感じたのだ。それを引き継ぐのは、同じグループのメンバーやファンになるだろう。そうしたことを考えたとき、アイドルという趣味は広がっていくように思えた。
そして、11月26日の横浜アリーナで、まったく同じように感じていた。モーニング娘。’14の道重さゆみさんの卒業ライブだ。
規模はまったく違う。だから比べるな、と言われるかもしれないけれど、そこにいた人の気持ちは変わらないと思うのだ。そういうものが、いろんな場所に存在していて、それがすべて引き継がれていく。
きっと2015年もいろんな人/グループの卒業があるだろう。でも、それはアイドルブームの終演にはつながらない。アイドルが好きで、その思いを引き継いだ人は、やっぱりアイドルを応援したいと感じると思うのだ。現場に行く、CDを買う、といったことがなくなっても、応援するという気持ちがなくなることはない。
そうしたことが重なっていくことで、さらにアイドルは一般化し、趣味としてのアイドルの土壌を固めるものになるだろうし、より誰もが気軽に参加できるものにつながっていくだろう。そんな趣味としてのアイドルのいろんな楽しみ方が、2015年も生まれていくと思うのだ。
TOKYO AUDIO STYLE
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