SRAM

福岡には「めんたいロック」と呼ばれる独自の音楽文化があった。サンハウス、シーナ&ロケッツ、ルースターズ、ロッカーズ、ARB、モッズ、モダンドールズ...日本のロックシーンにも大きな影響を与えたこれらのアーティストは福岡を拠点に活動していたこともあって、1980年当時、福岡は一躍脚光を浴びた。

それから30年あまりがたち、新たに「めんたいロック」を受け継ぐグループが登場している。その名は「SRAM」(すらむ)。実はこれ、サンハウス、シーナ&ロケッツのS、ルースターズ、ロッカーズのR、ARBのA、モッズ、モダンドールズのMからつけられた略称だ。

ただ、SRAMは実はロックバンドではない。九州発のアイドルグループ・LinQの派生ユニットである。アイドルがめんたいロック...福岡支局企画第二弾は、その仕掛け人であるCrazy.Funky.TOMYさんに福岡で話を伺った。


―― TOMYさんが最初に出会った音楽は何ですか?

中学生の頃にサンハウスに出会ったのが最初でしたね。あの頃フォークヴィレッジという、フォークの愛好会みたいなのがたくさんあったんですよ。そこにサンハウスが来たのが衝撃だったんですね。顔は化粧しているし、ロックをやっているし、というのが衝撃で。

―― フォーク全盛だったのにロックが出てきたのが衝撃だったんですね。

その後ロックよりも黒人音楽に興味を持つようになるんですが、、
実は18才でアメリカに行ったのですが、そこでソウルミュージックに関わっていてバンドの専属ミキサーをやっていたんです。そのときDJを見て、同じくらい盛り上がるので、「DJってすごいな」と。それでDJを目指したんです。

19才のときに日本に戻ってきて、大阪のディスコでDJを始めて、28才のときに福岡に戻ってきてディスコをやりながらFMラジオでしゃべったり。実は大阪にいた時期から福岡のダンサーはすごいぜという話は聞いていたんです。BE BOP CREWのYoshibowの名前は大阪にも聞こえていたので。

Crazy.Funky.TOMYさん

Crazy.Funky.TOMYさん


―― 福岡の音楽文化って最初はどこからスタートしたのでしょうか。

ライブハウス的な喫茶店「照和」から始まったと思うんです。井上陽水さんとか甲斐よしひろさん、チューリップとか、海援隊もそうですね。そのほかにもライブハウスはたくさんあったんです。で、1972年くらいからサンハウスが出始めて。これが福岡でのロック文化の始まりでしたね。

―― 福岡といえばめんたいロックと言われるようにロックが流行りましたけれど、この背景って何だったんでしょうか。

よく言われるのは港町ということですね。ビートルズを輩出したのが港町のリバプールということもあり、「日本のリバプール」と言われていますし。でも私は基本は「オッペケペー節」で一世を風靡した川上音二郎だと思うんですね。音曲と踊りをする人で、今で言うとリズム芸人ですね。彼がお弟子さんとかをたくさん輩出して。で、何かがあるとすぐ舞台に出たがるんです。それが私は博多どんたくにつながっていると思うんですよ。何せ38,000人も踊る人が出てくるわけですから(笑)。目立ちたがりということですね。

―― TOMYさんは福岡のアイドルグループ・LinQの派生ユニットであるロックユニット「SRAM」を手がけていらっしゃいますが、結成経緯は何だったんですか?

ロックっぽいアイドルをやりたいと思ったんです。自分の周りが年齢が近いロッカー連中ばかりになってしまったので(笑)。東京から帰ってきた人とか、今でも現役だけれど福岡で活動している人とか、ロックな人が周りに増えたので、ロックとアイドルをくっつけたいなとは元々思っていたんですよね。

その矢先にBABYMETALが出たんです。で「あ、これはもうできないな」と思ったんですね。でも、「ちょっと待てよ、BABYMETALがやっているのはメタルだな」と。それで思ったのは、福岡のめんたいロックを福岡の人でやるのがいいんじゃないかと。例えば名古屋のアイドルがめんたいロックをやったところで普通のロックになってしまうので、福岡出身の人がやればめんたいロックがもう一回脚光を浴びるのではないかと。そうしたら今周りにいるアーティストたちにもスポットが当たるんじゃないかと。

周りにいるのはすごい連中ばかりなんですよ。日本でNo.1と言われているドラマーの池畑潤二という先輩がいるのですが、元々THE ROOSTERSで今はDee Dee FeverやHEATWAVEで叩いているのですが、すごいドラムだけれど、あまりスポットが当たることはなくて。知っている人は知っているという。いずれは池畑さんにもSRAMで叩いてほしいと思っています。
断られるでしょうけど(笑)。

―― 今「めんたいロックはこのバンド」というのがないということですか?

ないんです。SRAMの「レモンティー」(1stシングル。サンハウスのカバー)を弾いてもらった百々和宏(ももかずひろ)が「めんたいロックをやっている奴がいない」と嘆いていたんですよ。地元にいないと。ただ東京に行くと、その頃の音楽が好きな人がいっぱいいて。で、「アイドルでやれんかいな~?」といったら名のあるアーティスト達が協力しますと言ってくれて。それで集まってくれたんです。

―― SRAMは6月9日のいわゆるロックの日には3rdシングル「ユー・メイ・ドリーム/可愛いアノ娘」をリリースしますね。

「ユー・メイ・ドリーム」はシーナ&ロケッツのカバーです。鮎川さんにもシーナさんにもこのことは事前に伝えてあって、1月に録音したんですよ。で、トラックダウンが終わって上がってきたのがシーナさんの亡くなった翌日だったんです。なので聞いてもらうことはできなかったのですが、鮎川さんからは葬式の時に「SRAMに宜しく」という伝言までいただいて。その後CROSS FM(北九州にあるFM局)で鮎川さんが出たときはSRAMのことを話してくれたらしくて。

―― SRAMに期待しているという感じなのでしょうね。

鮎川さんは67才なのですがメンバーのMYUが13才なので(笑)、孫みたいな感覚で、かわいくてしょうがないという部分もあるでしょうね。

―― 受け継いでくれるのが自分の子供だったり孫みたいな世代というのもうれしいのかもしれないですね。

それがものすごくうれしいんだと思います。先日もサンハウスでドラムをやっていた鬼平さん(坂田紳一)がわざわざSRAMのライブに来てくださって「サンハウス(の曲)をやってくれてありがとう」と。

50才以上の人たちはサンハウスとかの音楽を継承していたんです。その下の世代で継承していた人がいなかったんです。途絶えていた状態で。それで次に来たのがSRAMアイドルだったのでみんなびっくりしていたけれど、でも後ろをやっているメンバーもみんな本物だったので。アレンジのSHiNTAくん(LinQを手がける作曲・編曲家)も曲はあまり変えなかったですし。彼によると、今のロックは重々しいのが多いけれど当時の音色はライト感というかスピード感があるのでそこを聞かせたい、いじるのがもったいなくなってくるそうです。

SRAM

SRAMのメンバー。左上から時計回りにAYA、SARA、ROU、LADY K、中央がMYU。


―― TOMYさんがSRAMを通して伝えたいことって何ですか?

「昔こんな曲がありました」という懐古だけでなく、昔の曲を今聴いて、これくらいのレベルがあったんだと思うし、今だから「新しいな」と思ってもらえると思うんですよね。今、一発撮りで生ライブでやっているバンドもいますけれど、どうしても打ち込みという手が入りますが、昔の人は本当に生演奏だけでやっていたので。SRAMは生演奏の音にアイドルの子の声が乗っているだけで。完全生音です。

―― アイドルをきっかけにして昔のロックを感じ取って欲しいわけですね。

本当はルーツにまでいってほしいんですけどね。DJの仕事がまさにそうなんですよ。かつてDJをやったときに、当時は情報が少なくて輸入盤がほとんどだったので、誰がギターを弾いて誰が作曲してアレンジして、と言うのは最初は覚えきれないので書き留めていたんですよ。で、次にレコード買ったときに「また同じ人がいる」と。そして地域によって同じブラックミュージックでも差がある、アレンジの仕方も全然違うことに気づくんですね。となると大本のこの人はレコードを出していないのかな?と探るようになるんです。そして中古屋とかでレコードを探して「こんないい曲ある」というのを知って...

それで音楽の知識が広がっていくし、まだ流行っていないものを発見したときの喜びというのがあるんですね。アイドルもそうだと思うのですが、まだ売れていないときに「こんないいの見つけた」といって、トレジャー感覚じゃないけれどそういう面白さがありますよね。

―― CDを探す喜びみたいなものを感じて欲しいと。

僕はもう一回パッケージが売れるべきだと思っているので。

―― TOMYさんがLinQに重ね合わせているものって何ですか?

LinQって一つの共同体じゃないですか。LinQなりのイメージがあるじゃないですか。その中で「一皮むけて欲しい子」っているんですよ。LinQに入ったら普通になるけれど、違うものを与えたらひょっとしたら一皮むけてそれをLinQに還元してくれるんじゃないかと思うような。

SRAMはもう一皮むけて欲しいなというメンバーを実は選んだんです。例えば「この子は歌がうまいから」「ダンスがうまいから」を最優先で選んだわけではないんです。それで選ぶともっと違うことを要求すると思うんですね。スキルを買って選ぶと「ここまでやってよ」とか。

「これだけ歌えるからSRAMやってみる?」ではなくて人間的に、そして表現者として一皮むけて欲しかったメンバーを選んだのであって、スキルではないんですよね。あ、MYUは別です。当時は小学生だったので、小学生にめんたいロック歌わせたら面白いなと(笑)。

―― LinQのメンバーに対して「表現者になって欲しい」という思いは、LinQに携わる制作陣みなさんに共通してますね。

SRAMはあくまでユニットなんですよ。グループではない。LinQにいながらでないとできない、LinQの派生ユニットなので、SRAMを通してロックしか興味がなかった人とか、一般の人がSRAMを通してLinQにも来て欲しいです。

SRAMのライブに来ていた方がLinQを見に来てくださるケースも出始めていて。SRAMはLinQと違って毎週のようにライブをやらないからなのですが、でも「SRAMでやっているあの子を見てみたい」という思いなんでしょうね。「この人はアイドルファンじゃないだろう」という人が来てくださるようになってますし、そういう流れが少しずつ広がっていけばいいなと。「LinQよかったよ」というのがロックファンの間でクチコミで広がってくれれば。

いつかLinQが大きな舞台に立ったときにSRAMを生バンドで見せられるくらいになりたいですね。

―― LinQの中のSRAMではなく、対等のような存在になればと。

渡邉俊夫さんという、石橋凌さんを撮り続けているカメラマンの方がいるのですが、彼がツイッターでつぶやいていたのは、最初はLinQがきっかけだったけれどSRAMを知るようになって。でもアイドルがめんたいロックをカバーすることにそんなに期待はしていなかったと。

ただ、周りにいるアーティストとかどんどん巻き込まれていっていき、彼が一番尊敬している石橋凌さんという日本一の表現者と、SRAMが同じステージに立つということがあったんですよ。その瞬間に彼の中でアイドルというものが吹っ切れたそうで。だって、神と一緒に出るという。出ている以上は石橋凌さんがOKをして評価をしたわけなので、その瞬間に僕はSRAMの見方が全く変わったと。

SRAMはそういう、周りのアーティストに助けられているんですよね。

SRAM

LinQを支える制作陣。左から作曲・編曲家のSHiNTAさん、振り付け師のSOさん、そしてプロデューサーのTOMYさん。


SRAM公式サイト
http://linq-sram.net/

リリース情報

SRAM 3rd Single 「ユー・メイ・ドリーム/可愛いアノ娘」6月9日発売!!

SRAM

シーナ&ロケッツ『ユー・メイ・ドリーム』
元祖山善、TH eROCKERS 『可愛いアノ娘』
■Support member■
G. 藤井一彦 (THE GROOVERS)
B. 渡辺圭一 (HEATWAVE)
D. 矢野一成 (MOON・BEAM)

◆GUEST◆
山部"YAMAZEN"善次郎 「可愛いアノ娘」
梶浦雅弘(viva la silva)


リリースイベント詳細

2015/6/6(土) 東京スカイツリー スカイアリーナ  19時 HMVエソラ池袋店 
2015/6/7(日) 13時&15時 TOWER RECORDS 錦糸町店
2015/6/8(月) 19時30分 HMV record shop 渋谷 1F 店内イベントスペース
2015/6/9(火) 19時 TOWER RECORDS NU茶屋町店
2015/6/10(水) 18時 名古屋PARCO 西館1F 正面入口横イベントスペース
2015/6/11(木) 19時30分 AKIBAカルチャーズ劇場
2015/6/13(土) 18時 久留米CODE'(コードダッシュ)
2015/6/14(日) 13時 キャナルシティB1F サンプラザステージ 18時30分 TOWER RECORDS福岡PARCO店

※各会場のイベント時間及び特典時間・特典内容は別途各店舗詳細をご参照ください。

■SRAMとは

福岡・博多は「日本のリバプール」と呼ばれ、音楽、特にROCKは深く街に定着をしてきた。そこに誕生したのが日本中に一大ムーブメントを巻き起こした「めんたいロック」!その先輩たちへのリスペクトの気持ちを込めながら、アイドルグループLinQから新たに挑戦するROCKユニット「SRAM(スラム)」が誕生する。圧倒的な技術を持つミュージシャン達の演奏はもちろん、九州・福岡を拠点とする彼女たちにしか実現することが出来ない福岡にこだわったROCKを魅せつける!!

編集部有本

元エンジョイ!マガジン編集長(2014年10月時点)。かつてBIGLOBE MUSICを担当していた経験を活かし、よりエンジョイ!でウェッサイ!!なマガジンを目指していきます。

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