情報発信の取り組みについてお聞きした前編に続き、後編は起業支援への取り組みと特区指定で手に入れたもの、について引き続き福岡市市長室、広報戦略室広報戦略課長の大倉野良子さんに話を伺った。


■特区指定で手に入れた「規制緩和」と天神の大改革

―― 先ほど福岡市が「グローバル創業・雇用創出特区」だとおっしゃいましたが、その背景について詳しくお聞かせ下さい。2014年5月に福岡市は政府から特区に指定されました。これは何か市として活動した結果だったのでしょうか。

もちろん特区は福岡市として手を挙げて、頑張って勝ち取ったものです。この間の成果の一つは、天神地区では航空法の高さ制限の特例承認があります。天神は福岡空港が近いので建物の高さ制限が厳しいんですよね。

#FUKUOKA

福岡市役所を前に大倉野さん。「ぜひ福岡に遊びに来てください!」


―― あー、確かにオフィスビルをはじめ高層ビルは福岡にはないてすね。

天神周辺は一番高くても、この15階建ての市役所くらいです。昭和40年代に建てたビルが天神にはたくさんあるのですが、今の基準では容積率を満たしていないものもあります。だから、建て替えると(基準が昔と違うので)建て替え前よりも床面積が小さくなってしまいます。

特区で高さ制限の特例承認を受けて,さらに福岡市が容積率を緩和することなどで,10年間で約30棟の民間のオフィスビルの建て替えを誘導します。「天神ビッグバン」プロジェクトと名付けていますが、これによって,床面積を1.7倍,雇用も2.4倍になると見込んでいます。

―― 誰しも新しい、綺麗なビルで働きたいっていうのもありますしね。

特区によってそういった規制の緩和ができるわけですね。最後はやっぱり民間企業さんの動きを促進するということに尽きるんですよね。

―― 福岡市としてはクリエイティブ企業や人材に絞って誘致しているのですが、何か理由があるんですか?

ITやデジタルコンテンツ系の会社やに携わっている人が多いんです。大学やゲーム、IT系の専門学校には九州から中の若い人が福岡に集まっています。

―― せっかく福岡に集まった人たちを福岡にとどめさせておくという側面もあるんでしょうね。卒業してクリエイティブな会社を求めて東京に行く、ではなくて、福岡にもありますと。呼びこむだけじゃなくて残ってもらうといいますか。

やっぱり「福岡の大学は出たけど就職先がない」となると東京に行ってしまいますからね。実は福岡市は人口が増えているんです。この人口減少の世の中、かつ地方都市にもかかわらず。150万を超えたのが一昨年で、今は152万人ですから毎年1万人以上のペースで増えています。それは仕事があるということだと思いますので、この動きを加速するためにも止まらずに進めないといけないなと。

―― やっぱりそういった施策というのは今の高島市長になってから、なんですか?

大きいですね。これまでもITやデジタルコンテンツ系のイベントや、起業相談はありましたけれど、高島市長になってからはな新しい取り組みがスピード感を持って実現しています。特区の指定を受けるときも、市長自ら精力的に活動しました。無料公衆無線LANサービスの「Fukuoka City Wi-Fi」も市長になってから整備しました。地下鉄駅で無料Wi-Fiを整備した自治体は福岡市が全国で初めて。国からもWi-Fiの取り組みについては高く評価されています。

#FUKUOKA

福岡市が整備した「Fukuoka City Wi-Fi」


―― 市長はまだ40才ですしね。地元放送局のアナウンサーだったこともあって情報発信もうまいですね。市役所前の広場にステージを設置してイベントをやりやすくしたり、市のイベントにLinQなど地元のアイドルグループを使ったりするのも市長の発想なのかなと。

LinQさんは区役所のイベントにも出てもらっています。市役所前のふれあい広場は民間が管理をしていて,毎日のようにいろいろなイベントが繰り広げられています。

―― LinQをはじめとした福岡のアイドルグループが多く出演した2014年10月の「The Creators」もそうでしたけど、市との関係がとてもいいんだろうなという気がしましたし、お互いのニーズがマッチして、Win-Winというか「一緒にやっていきましょう」ということになっている気がとてもしました。

Win-Winという以上に、LinQさんもそうですが「街のために」みたいな感じです。Rev.from DVLさんやQunQunさんも市の事業に出ていただいてます。

LinQ

福岡市役所前のふれあい広場で行われた「The Creators」にはLinQを始め福岡のご当地アイドルたちが競演を果たした(写真提供:ジョブ・ネット)

■マインド、ソフト面から次はインフラ、ハード面へ進化を続ける福岡市

―― 「The Creators」の映像演出で初めてしくみデザインさんを知ったり、結果的に福岡のベンチャー企業を知るきっかけになったんですよね。福岡市による支援制度なども受けて福岡で起業した人もいると思うんですが、実際にやってみてどんな声がありましたか?

フェアトレードで「モリンガ」というフィリピンのお茶を扱っている山田麻樹さんという女性(「株式会社Girls, be Ambitious」代表取締役社長)がいるのですが、彼女は熊本出身で。どこで起業してもよかったそうなのですが、彼女が言うには、福岡で起業してよかったことはすぐに人が助けてくれると。「こういうことで困っているのならこの人に言ってあげるよ」と、どんどん人がつながっていくことがいいっておっしゃっていました。

東京でもそういうことはあるのかもしれませんが、福岡は街がコンパクトなので、知り合いも多いですから。起業しているときに自分が足りないところを補ってくれる人がすぐに見つかるというところがいいと。

あと家賃も圧倒的に安いと思います。出張も新幹線や飛行機でサッと行けますからね。空港も近いですし。

―― 「人がつながる」という言葉は、福岡で音楽制作をされている方にお話を伺ったときも同じことをおっしゃってました。

東京は「これは○○さんに言わないで」とかあったとしても福岡だと、たぶんすぐにバレますから。(笑)。知り合いを通じて自分のビジネスのためになる情報が入りやすいというのはありますね。

―― 起業家に向けた福岡のオススメポイントはなんですか?

住環境がいいと思います。安いというのもありますし、自然も豊かですよね。東京だと都心から1時間行ってもビルだらけですが、福岡から30分もすれば隣の糸島市に着いて,サーフィンしながら仕事できたりしますしね。仕事をきちんとしながら豊かな生活が送れるというのはオススメですね。あと、食べ物は産地と近いんです。魚も新鮮で安くておすすめです。スーパーに並んでいる刺身のレベルの高さは,すごいですよ。

―― 福岡の文化気質ってどんなところがあると思いますか?

他所から来た人にやさしいといいますか。元々人の交流で栄えたまちなので、、他所の人に対しても非常にオープンに接することができていると思います。

―― 歴史を紐解けば太宰府があったり、昔から海外の玄関だったからかなと思ったんですね。海外文化を受け入れてきたわけで。

2000年くらい前から中国大陸との交流をしていたのって、日本の他の地域ではないと思うんですね。大陸から福岡に伝わって,そこから日本全国に広がったものがたくさんあります。うどんとか。。ラーメンが有名ですけど,うどんもすごいんですよ。新しい文化、技術、サービスを取り入れて広げていくのは向いているかなと思いますね。

―― 最後に今後の福岡市の取り組みについてお聞かせください。

「FUKUOKA NEXT」という、福岡をさらに次のステージに引き上げる、飛躍させるチャレンジをしています。都市の成長と生活の質の向上のバランスのとれた街を目指します。先ほどの天神ビッグバンののように天神をさらに供給力の高い街にしたり、空港へのアクセスも都市高速道路を延長してよりスムーズにしたり、地下鉄七隈線を博多駅まで延伸したり(2020年開通予定)、もっともっとアクセスをよくしたいと。

街の魅力をもっと高めていって、しっかり発信していくことで福岡で働きたい、福岡に住みたいと思ってもらえたら。「福岡っていいよね」だけでなく首都圏の方々に「東京もいいけれど福岡もいいね」と働き場所の選択肢になるような取り組みをしていきます。

―― ありがとうございました。


───
取材翌日の夜、市役所前のふれあい広場では、「ベルギービールウイークエンド」が開催されていた。ステージでの海外ロックバンドによる生演奏の音が天神中心部に響き渡る中、広場は金曜の仕事帰りの会社員であふれ、野外ビアホールと化していた。大倉野さんによれば「ふれあい広場で何かイベントをすることで"何かやっている街"というのが伝わる」とのことで、これも福岡市として重視していることなのだ。

そもそも市役所前の広場で酒が飲めるというのは非常に珍しいケースではないだろうか。そんなところからも街の、そして何より市民の活気作りに何より取り組む福岡市の姿が垣間見えた。

仕事として、ではない、人生として、生き方としての選択肢に、福岡が入る時代が、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。

福岡市役所


#FUKUOKA 福岡のクリエイティブな最新ニュース
http://hash.city.fukuoka.lg.jp/

Fukuoka Facts | データでわかるイイトコ福岡
http://facts.city.fukuoka.lg.jp/

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編集部有本

元エンジョイ!マガジン編集長(2014年10月時点)。かつてBIGLOBE MUSICを担当していた経験を活かし、よりエンジョイ!でウェッサイ!!なマガジンを目指していきます。

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