SNSを使っているとしばしば見かけることのある、「炎上」という表現。
普段からインターネットにふれていて、この言葉の意味を知っている人も多いのではないでしょうか。日常会話ではあまり使わない一方で、SNSにおいてはありふれた、身近な表現として定着した言葉であると言えます。
一般的には避けるべきものとして語られることの多い、ネット炎上。本記事では、そんな「炎上」という言葉について説明します。
「炎上」とは
インターネットにおける「炎上」という言葉について、デジタル大辞泉では次のように説明されています。
“(比喩的に)インターネット上のブログなどでの失言に対し、非難や中傷の投稿が多数届くこと。また、非難が集中してそのサイトが閉鎖に追い込まれること。祭り。フレーム。フレーミング。”
(引用元:Weblio:「デジタル大辞泉」より)
ここでは「ブログなど」と書かれていますが、現在はTwitterをはじめとするSNSでの投稿や、YouTubeの動画が炎上するケースも珍しくありません。必ずしも発信力のある企業や著名人に限らず、一般ユーザーもたびたび炎上しています。
では、いつの間にか定着していた印象もある「炎上」という言葉ですが、いつ頃から使われるようになったのでしょうか。
「炎上」の成り立ち
遡ってみると、SNSが普及する以前の2000年代前半には、すでに現在の「炎上」と似た光景がしばしばインターネット上では見られていました。
当時、非難を集めていたのは、主に企業や著名人の失言。
まず、テレビやブログでの失言が匿名掲示板で槍玉に挙げられると、それを責める膨大な数のコメントが書き込まれます。すると、問題視された企業のサイトや著名人のブログに突撃し、電話やメールでクレームをする人が出現。やがてネットニュースでも取り上げられるようになり、ますます非難が集まるようになる――という流れです。
この一連の盛り上がりについて、当時は「祭り」とも呼ばれていました。それがいつしか「炎上」と表現されるようになり、2010年頃には現在の意味が定着したようです(※ただし「祭り」にはポジティブな盛り上がりを指し示す場合もあり、そちらは現在の「バズ」に近いと言えそうです)。
当初、炎上の対象となっていたのは主に企業や著名人でしたが、2005年には女子大生アルバイトのブログが炎上。そして00年代後半になるとTwitterに代表されるSNSが普及し、一般ユーザーも頻繁に炎上するようになります。飲食チェーンのアルバイトの悪ふざけ動画などが記憶に残っている人もいるのではないでしょうか。
なぜ「炎上」が起こるの?「バズ」とは違う?
こうして振り返ってみると、一般のネットユーザーが「炎上」するようになったきっかけのひとつに、「SNSの普及」があったことは間違いありません。
現在はネットリテラシーの重要性が認知され、学校でも教育されるようになっています。しかしまだSNSが普及の途上にあった当時、インターネットに慣れていない人は、「SNSに投稿する」ことの意味に無自覚でした。
Twitterにせよブログにせよ、「SNSに投稿する」ということは、言い換えれば「全世界に発信する」こと。悪ふざけや悪口は仲間内であれば許されていたかもしれませんが、ネット上ではどこの誰の目に入るかわかりません。それを不快に感じた人が話題にしたことで非難が集まり、炎上してもおかしくないわけです。
とはいえ、「個人の発言にまで目くじらを立てなくても……」という声もあります。また、過去の炎上を振り返ってみると、一見すると失言には思えない発言について、表現の一部を切り取って誹謗中傷が集まったこともありました。近年はそのような「過剰な正義」を発端とした炎上に対して、批判の声も挙がりつつあります。
その一方で、近年はポジティブな「バズ」も起こりやすくなりました。
自分が公開した動画や作品に注目が集まり、拡散されて「バズる」ことによって、仕事や活動の幅を広げるチャンスになる。SNSには、そのようなメリットもあります。バズれば心無い言葉も届くようになりますが、それはまた「炎上」とは別物です。
ただし、言葉の切り取り方や解釈の違いによって、ネガティブな「炎上」にも、ポジティブな「バズ」にもつながりうるのが、不特定多数が利用するSNSという空間です。そういう意味でも、SNSの特色と「炎上」の仕組みについて知るのは大切だと言えます。
いずれにせよ、誹謗中傷による個人攻撃は許されないものですし、場合によっては裁判沙汰にもなりかねません。SNSを利用している以上は誰もが加害者にも被害者にもなりえますので、日頃から情報発信の内容や表現には気をつけるようにしましょう。