株式会社アイ・コミュニケーションがビジネスパーソン向けに実施した「ビジネスメール実態調査2013」によると、メールを受け取ったときに不快に感じる内容について、「文章が失礼」(52.20%)、「文章が曖昧」(36.53%)、「言葉遣い」(23.83%)の順にランクインしていました。
改めて「メールでの文章の書き方」を学ぶ必要があることがわかります。
そこで今回は、「ちょっとの工夫で仕事がぐんぐんはかどるビジネスメール術」(主婦の友社)などの著書を数多く出している、一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事の平野友朗さん(同社代表取締役)から、ビジネスメールの基本について教えていただきました。
ビジネスメールの基本マナーとは?
――まず、ビジネスメールの最も基本的なマナーを教えてください。
「基本は相手のことを考えた文章を書くこと。また、メールの本文には型があります。宛名、挨拶、名乗り、要旨、詳細、結びの挨拶、署名の順で書くと、一般的によしとされるメールが書けます」
――仕事のシチュエーションにあわせたメール表現についてお聞きしたいと思います。まず、ミスをしてしまって謝るときに気をつけることは何でしょうか。
「お詫びの程度によって、電話や対面など手段を使い分けます。責任転嫁や言い訳をせず、誠実に謝ることが大切です」
メールで謝るだけでは気持ちが通じない場合もあります。状況によって謝罪の方法を臨機応変に変えたいものです。
――これもたまに必要になることですが、遅刻/欠勤時のメールで心がけることは何でしょうか。
「『遅れます』『休みます』だけでなく、状況を説明し、対処まで記載することです。」
たとえば、「車両トラブルで電車が停まっているため遅刻します。15分待っても動かない場合は、タクシーで向かいますので、10:30には着きそうです」というように、具体的に書くことが大切ということですね。
“デキる人”のメール文章のコツが聞きたい!
そのほかにも、仕事がデキる人が心がけている文章のコツについて聞いてみました。
――相手が気持ちよく動いてくれる、お願いしたいときの表現には、どのようなものがあるのでしょうか。
「ときに、クッション言葉は効果的です。『お忙しいところ誠に恐縮ですが~』『ご迷惑おかけして誠に申し訳ありませんが~』『お手数をおかけして恐縮ですが~』などを使うとよいでしょう」
お願いの前に一言添えるだけで、一方的で強引な印象がなくなるんですね。
――さらに相手への印象をよくする表現には、どのようなものがあるのでしょうか
「相手への感謝や労い、配慮の言葉を添えると効果的です。これから寒くなる季節だと、『最近、風邪が流行っているようですので、くれぐれもお気をつけください』などがいいですね」
夏には「猛暑が続きますので」など、季節に応じて表現を変えるようにしましょう。
――不躾(ぶしつけ)な印象を与えずに提案を断るには、どうすればよいでしょうか。
「『ご提案ありがとうございました。社内で検討した結果~』など、相手からいただいた提案に感謝した上で、丁寧に断るのがよいです」
断られた相手は多少なりともダメージを受けてしまいます。そのため、こちらでもクッション言葉を添えておきましょう。
ビジネスメールに関するミニ知識
最後にビジネスメールに関して、知っておきたい知識について聞いてみました。
――ビジネスメールのTOとCCの正しい使い分けはどうすればよいですか?
「TOはメールの主な送り先を指定し、CCは共有したい相手を指定します。返信してほしい相手はTOに指定します」
メール本文の宛名にはTOとCCを「●●様」と書いておくと、誰がメールを受け取っているか一目瞭然ですね。
(例) 山田太郎様
(CC:森川花子様)
――初めて連絡する相手にメールするときの作法について、教えてください。
「見知らぬ人から突然メールが届くと不審に思われます。相手は『どうしてメールアドレスを知っているの?』『どうしてメールを送ってきたの?』と警戒しているものです。その警戒心を解くために、相手との関係性を書きます。具体的には、メールアドレスを知った背景、メールを送った理由や目的を書きます。」
また初めての人に「お世話になります。●●です」と書き出すと違和感を与える場合も。そこは「はじめまして」と一言入れるなど、相手に応じた書き出しを工夫しましょう。
――「!」や「?」は使ってもいいのでしょうか。
「相手と状況によります。中には感嘆符や疑問符を不快に感じたり、ビジネスメールで不適切だと考えている人もいます。相手がどう捉えているかわからない場合は、使わないほうがトラブルは防げます」
「。」でも事足りることが多いので、適宜使い分けたいものです。
――「ご苦労さまです」は使わないほうと聞いたことがあるのですが・・・?
「目上から目下に使う言葉とされているので、相手によってはメールでも使わないほうがよいですね。ビジネスメールでは相手と状況に応じて判断します。相手がどのように感じるかが基準となります」
メールの目的は、受け取った相手にきもちよく動いてもらうこと。そのため、ビジネスメールでもリアルでのコミュニケーションと同様に、相手が不快に感じる表現を使わず、常に受け取った相手のことを想像して、文章を書くように心がけたいですね!
講師プロフィール
株式会社アイ・コミュニケーション 代表取締役
一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事
1974年、北海道生まれ。筑波大学人間学類(認知心理学)卒業。広告代理店勤務を経て2003年独立。2004年、アイ・コミュニケーション設立。著書は21冊を超え、メールマナー等に関する取材を300回以上受けるビジネスメール教育の第一人者。個人のメールスキル向上指導、組織のメールのルール策定、メールの効率化による業務改善などを手掛ける。官公庁、企業、学校、団体、商工会議所などへのコンサルティングや講演・研修回数は年間70回を超える。通信教材やeラーニングの開発にも携わる。2013年に、一般社団法人日本ビジネスメール協会を設立。認定講師を養成し、ビジネスメールの教育者を日本全国に輩出。著書は、『ちょっとの工夫で仕事がぐんぐんはかどるビジネスメール術』(主婦の友社)など合計21冊(翻訳本2冊を含む)がある。