スマートフォンを使ってネットに繋げる「テザリング」という機能。実は3つの方法があります。3つの方法とその長所・短所を実際の機器で検証も交えて、紹介します。
3つの「テザリング」
テザリングとは、スマートフォンをモバイルルーターのように使う機能。LTE/3G回線を使って、パソコンやタブレット、ゲーム機などをネットに繋げます。スマートフォンのメーカーによっては「インターネット共有」と呼ばれることもあります。
テザリングには大きく分けてWi-Fiテザリング、USBテザリング、Bluetoothテザリングと呼ばれる3種類の方法があります。この3種類にはスマホとパソコンを繋ぐ方法が異なり、それぞれ長所・短所があります。
▲テザリングのイメージ
Wi-Fiテザリング
Wi-Fiテザリングは、スマートフォンがWi-Fiスポットになり、パソコンやゲーム機などの機器をWi-Fi接続して使います。モバイルWi-Fiルーターと同じような使い方と言えば、イメージしやすいかもしれません。
Wi-Fiテザリングは手軽さが特徴です。スマホのWi-Fi接続に慣れていれば設定はそれほど難しくなく、一度設定を済ませてしまえば、次からはテザリングをオンにするだけで使える状態になります。複数の機器を1台のスマホに同時に繋げる上、ゲーム機やカメラなどのパソコン以外のWi-Fi機器も繋ぐことができます。
一方、弱点は電池の消費が激しいこと。充電しながらのWi-Fiテザリングはスマートフォンに負荷がかかり、発熱するおそれもあるため、注意が必要です。
●Wi-Fiテザリングの使い方
※以下では、HUAWEI製のAndroidスマートフォン「HUAWEI nova 3」とWindows 10搭載のノートパソコンで接続方法を紹介します。スマートフォンの機種によっては設定の項目名や内容が異なる場合もあります。
【スマートフォン側の設定】
(1) 「設定」→「無線とネットワーク」→「テザリングとポータブルアクセス」を開く。
(2) 「ポータブルアクセスポイント」を開き、「Wi-Fiアクセスポイントを設定」をタップする。
(3)「Wi-Fiアクセスポイント」の画面にある「パスワード」も入力欄に好みのパスワードを記入する(覚えておける範囲で複雑なパスワードを設定しましょう)。
(4)「HUAWEI nova 3」と書かれている部分の右側のボタンを押す。
※「HUAWEI nova 3」の表示はアクセスポイント名(SSID)といいます。SSIDはWi-Fiを選ぶときの目印になるものです。「Wi-Fiアクセスポイントを設定」から変更できます。
【パソコン側の設定】
(5)WindowsでWi-Fiに一覧画面を開き、SSID「HUAWEI nova 3」を選択。(3)で決めたパスワードを入力すれば接続完了です!
【2回目以降は……】
- スマートフォンの通知エリアにある「アクセスポイント」のアイコンを押すだけで、Wi-Fiテザリングが有効になります。あとはパソコン側で接続を済ませるだけ。
●Wi-Fiテザリングの長所・短所まとめ
【Wi-Fiテザリングの長所】
- 一度設定したら次からは自動で繋がる
- 複数の機器を同時に繋げられる
- Wi-Fi対応ならパソコン以外の機器でも使える
【Wi-Fiテザリングの短所】
- スマホの電池を消費しやすい
- パソコンなど接続機器の電力消費も大きい
USBテザリング
スマートフォンとパソコンをUSBケーブルで繋ぐ方法です。スマートフォンを充電しながら使える上、Wi-Fiを利用しないので接続元となる機器の消費電力も削減できます。
スマートフォンの機種によってはパソコン側に「ドライバー(データをやり取りするためのソフトウェア)」を導入する必要があり、設定難易度はやや高め。最大速度はスマートフォン、パソコン、ケーブルそれぞれの性能に左右されますが、Wi-Fiテザリングよりも高速になる場合もあります。
●USBテザリングの使い方
(1)パソコンとスマートフォンをケーブルで接続する。
※「充電専用」ではなく、データ通信に対応するケーブルでつないでください。
(2)ドライバーがインストールされるまでしばらく待機する。
※「HUAWEI Nova 3」の場合、ドライバーは自動でインストールされます。
※iPhoneの場合は、ドライバーを導入するために、「iTunes」を導入する必要があります。
(3)「設定」→「無線とネットワーク」→「テザリングとポータブルアクセス」を開く。
(4)「USBテザリング」をオンにする。
【2回目以降は……】
パソコンとスマホをケーブルで接続してから、(3)と(4)の操作でテザリング機能を有効にします。
●USBテザリングの長所・短所まとめ
【USBテザリングの長所】
- スマートフォンをパソコンから充電してテザリングできる
- 通信が高速になるケースが多い
【USBテザリングの短所】
- スマホとパソコンをケーブル接続する必要がある
- 複数の機器を接続できない
- パソコン以外を使えない
- 最初に使うときの設定が難易度やや高め
Bluetoothテザリング
スマートフォンとパソコンをBluetoothで接続します。Wi-Fiテザリングと同じく無線で繋ぐ方法ですが、BluetoothはWi-Fiより電池消費が少なく、スマートフォン側の負荷も抑えられます。一度”ペアリング”の設定を行えば、次回からはBluetoothテザリングをオンにするだけで使えます。
難点としてはパソコン側(Windows)の設定がややこしいこと。そしてBluetooth規格の制限として、高速な通信には対応していないことが挙げられます。
●Bluetoothテザリングの使い方
【準備段階:ペアリング】
(1)スマートフォンの「設定」→「デバイス接続」→「Bluetooth」を開く。
(2)パソコンの「設定」→「Bluetoothとデバイス」を開く。
(3)「Bluetoothまたはその他のデバイスを追加する」を選ぶ。
(4)「Bluetoothデバイスを接続する」から、画面に従ってスマートフォンを接続する。
【Bluetoothテザリングの起動】
(1)スマホの「設定」→「無線とネットワーク」→「テザリングとポータブルアクセス」を開く。
(2)「Bluetoothテザリング」をオンにする。
(3)パソコンで「コントロールパネル」を開く。
(4)コントロールパネルの「デバイスとプリンター」の項目を選ぶ。
(5)「デバイス」一覧からテザリングで使いたいスマートフォンのアイコンを右クリックして、「接続方法」→「アクセスポイント」を選択する。
●Bluetoothテザリングの長所・短所まとめ
【Bluetoothテザリングの長所】
- Wi-Fiを利用するよりも消費電力が少なくて済む
- 一度設定をしてしまえば、接続が簡単!
【Bluetoothテザリングの短所】
- 設定が少々面倒、特にパソコン
- 規格上、高速な通信には対応していない
徹底検証! 3つの「テザリング」
通信の早さを比較してみる
ここからは、3つのテザリングの実力を検証します。まずは速度を比較してみましょう。
検証はスマートフォン「HUAWEI nova 3」、Windows 10搭載のノートパソコン「HUAWEI MateBook X」、NTTドコモの回線を用いて行いました。計測サイトはBIGLOBEの「通信速度診断」を利用しています。計測結果の数値は3回計測し、平均をとったものです。通信速度は環境によって大きく異なるものですので、以下の数値は速度差を示す目安とご理解ください。
Wi-Fiテザリング | USBWi-Fiテザリング | Bluetoothテザリング |
---|---|---|
6.42Mbps | 8.23Mbps | 1.25Mbps |
多くのスマホに搭載されているであろう「Wi-Fiテザリング」ですが、いくつかあるWi-Fiの規格によっても出せる速度は変わってきます。検証した機種の組み合わせでは「2.4GHz帯のIEEE802.11n」という、比較的高速な規格で通信しています。とはいえ、Wi-Fiは周囲の環境に影響を受けやすく、USBテザリングの速度と比べたら2割ほど下回っています。
USBテザリングは3つの方法の中で最も高速という結果となりました。周囲の電波の影響を受けないため、たくさんのWi-Fiが飛んでいるカフェなどでは特に有利と言えます。USBテザリングでも機器の対応規格によって上限速度が決まります。スマートフォン、パソコン、USBケーブルの3つが「USB 3.0/3.1」という規格に対応している場合に高速に通信できます。とはいえ、ひとつ前のUSB 2.0でも十分な速度が出せるため、USB 2.0の機器を使っても実際の通信速度に影響が出るケースは少ないでしょう。
Bluetoothテザリングは、待機時の低消費電力という特性がある反面、速度は抑えられています。今回測定された1.25Mbpsという速度は、画像が多いWebサイトを読み込むときに「ちょっと待たされるな」と感じるくらい、体感で影響がある速度と言えます
電池の減り具合を比較してみる
次に、同じ機器を用いて電池の減り具合を比較しました。動画配信サイトのNetflixで2時間6分の映画をパソコンで再生し、再生終了後のスマホ・パソコンの電池消費を比較します。
Netflixは通信速度にあわせて最適な画質を調整されますが、2時間の映画で300MB(メガバイト)~3GB(ギガバイト)という多くの通信を行います。この通信部分がスマートフォンのLTE回線を使って行います。つまり、この検証はテザリング機能を使って継続的に大容量の通信をしたときのバッテリーの消費量を確認するものです。
それでは、さっそく結果をみてみましょう。以下の表のようになりました。
【映画再生後の電池消費量】
Wi-Fiテザリング | USBテザリング | Bluetoothテザリング | |
---|---|---|---|
スマホ | 消費量:24%(残量:100%→76%) | 0%(100%→100%) | 22%(100%→78%) |
パソコン | 41%(100%→59%) | 39%(96%→57%) | 32%(97%→65%) |
スマートフォン・パソコンの双方で、電池消費がもっとも大きいのはWi-Fiテザリングという結果になりました。Wi-Fi(無線)を使って高速な通信を使うため、高めの負荷がかかることからみても、予想通りと言えるでしょう。
一方、意外な結果となったのがUSBテザリング。今回は、スマートフォンからパソコンにテザリングしながら、パソコンからスマートフォンに給電しています。そのため、スマートフォンが電池を消費していないのは当然の結果ともいえます。一方で、スマートフォンへ電力を供給していたパソコンの方は、Wi-Fiよりも消費電力が低いという結果になりました。大容量の通信を行う場合は、ケーブルで繋いだほうが電池の節約になると言えそうです。
Bluetoothテザリングは、パソコン側ではもっとも消費電力が低くなりました。一方で、スマートフォン側の消費電力量はWi-FiとBluetoothで大差ない結果です。Bluetoothテザリングを使って再生したときは、再生開始時に20~30秒ほど待たされました。その後はスムーズに視聴できましたが、画質が落とされていたようです。パソコン側の電力消費が抑えられたのも、低画質なため負荷がかからなかったから、と推測できそうです。
今回の検証では、テザリング使用時のスマートフォンの状態を調べるため、アプリ「BatteryMix Pro」使って電池残量の推移を記録しました。そのグラフを参考として紹介します。
テザリングの注意点
最後に、テザリングを使うときに気をつけておきたいポイントにも触れておきましょう。
一般的にテザリングで使った分のデータ量はスマートフォンで使ったデータ通信として、課金の対象になります。「毎月○GB」の容量設定があるプランでは、使った分だけ”ギガが減る”ことになります。パソコンの通信はスマートフォンよりも多くのデータをやり取りすることが多いため、データの消費にも気をつけましょう。
テザリングの機能はBIGLOBEモバイルを含む多くの格安SIMでは無料で使えます。一方、大手キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンク)の一部の料金プランでは、テザリング機能を利用するためのオプション料金が必要となる場合があります。
関連記事
・【今さら聞けない】iPhoneでテザリングをする方法
・ 2台持ちが当たり前?!デバイスの使い分け術まとめ
・ iPhoneのWi-Fi名、本名にしないほうがいいよ!